dream
□第三話 始まるA
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辺見Side
「辺見クン、咲山クン。ちょっと…」
「ぁあ?」
「作戦会議ダヨ!」
めんどくせ。なんて考えてたら早くしろって言われた。鬼道も目で言ってるし…はぁ。めんどくせ。
「二人に一つだけお願いしたいの。私の指示には絶対従って」
「…それだけ?」
作戦会議って言うからもっとイロイロ言うのかと思ってた。
「うん。辺見クンも咲山クンも、私のコト嫌いでしょ?」
否定しなかった。でもなんで俺達を選んだんだ?
「だから、それだけは守ってほしいの。それ以外は何をしてもいいから…」
「…なんで」
「え?」
「じゃあなんで俺達を選んだんだ?佐久間や洞面なら喜んで仲間になっただろうに」
「だって、…――」
――それじゃ意味ないもの。
松永は微笑んだ。それはとても淋しそうだった。
当然だ。今のサッカー部に松永の味方は佐久間と源田くらいだ。洞面や大野は気にしてるみたいだが表立って仲良くはしない。鬼道や成神が嫌ってるせいもあるだろう。
「成神クンとか、あからさまに嫌ってたら逆に清々するけど、そうじゃないみんなまで敵にする必要ないでしょ?味方、とまではいかなくても嫌われないようにくらいはしなくちゃ」
「…お前、本気?」
「本気」
即答だった。迷いなんてない、と目で分かった。
「…お前は苦手だが……――」
目を合わせられなかった。恥ずかしかったからなのかもしれない。
「ほら、始まるぞ」
「ぅ、ん。……ありがとう」
松永は抜き去り際、俺にだけ聞こえる声で呟いた。
「辺見…バカ?」
「うっせー」
花梨はこのサッカー部を変える。
なんとなく、そんな気がした。
――お前のプレーは嫌いじゃない。
咲山にも聞かれたし…あんなこと、言わなきゃよかったかな。