dream

□第三話 始まるA
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「試合は来週ってホント!?」

「ああ」

「どうしてさ!?」

「俺達は去年の優勝校だからな。シード権があるんだ」

「そんなぁ…試合、楽しみにしてたのに……うぅっ」


よほどショックなのか、花梨は泣くフリをする。


「止めろ、見苦しい」

「失礼ね!」


いつの間にか花梨のツッコミ要員となってしまった辺見。
源田はボケるし、佐久間は時々抜けてるし、他のヤツはあまりツッコまないしで、いつしか自然と辺見がツッコミ要員となっている。辺見自身、初めは嫌々だったが、今はもうどうでもよくなっている。周りはしなければいいのに、とは思っているが、わざわさ言う事でもない。



そんな中、総帥に呼ばれていた鬼道が帰ってきた。


「明日、ミニゲームを行う」

「ミニゲーム?」

「ああ。これは松永の実力を見る為でもある」

「わーい!試合だ試合だぁ♪」


よほど嬉しいのか、花梨は小躍りしている。持っているタオルを落としそうだ。


「テンション高いな…」

「だって試合だよ!?ミニゲームだけど、試合なんだよ!?超楽しみだよ!!」

「高すぎて引く」

「ですね」

「ちなみに今日は?」

「しない」

「えぇ〜残念〜。…でもよかった。すぐ抜けるし」

「なんか用事でもあるのか?」

「うん!雷門の応援に行くんだ〜」


ピキッ
何かが固まったような音がした。


「、雷門?」

「そうだよ〜」

「…制服のままで行くなよ」

「なんで?」

「なんでって…」


佐久間は黙った。佐久間だけではない。辺見も、源田も、全員が黙っている。


(なーんだ、罪悪感は持ってたんだ)


花梨は表情を変えずに小さく笑った。

誰も、何も言わない。言いづらい事でもあるが、あんまり長引くと雷門の試合に間に合わなくなる。
仕方ないなぁ、とでもいうように花梨は口を開いた。


「潰しに行ったから?」

「煤I…知ってたのか?」


聞いたのは佐久間だったが、驚いたのは全員だ。


「もちろん。帝国が負けたって有名な話じゃない?ま、実際は棄権しただけなんだけどさ」

「俺達を、恨まないのか…?」

「どうして?」


素直に聞けば、みんなキョトンとしている。


「雷門の覚醒には必要な事だった。それだけで十分だよ。それに…」


花梨はニコッと笑う。


「私がひどい目に遭わされた訳じゃないしね!」

「ぶっ!」

「ヒデー」


暗く、重かった雰囲気が一瞬で明るくなる。


「なんと言われようと、痛くも痒くもないわ!本当の事だもの」


まるで女王様。わざとだと分かっていても、嫌悪しそうなほどだ。
…もっとも、花梨を嫌悪できるくらいなら、帝国イレブン全員を嫌悪しなくてはならないが。



「じゃ、私そろそろ行くね。試合が終わったら帰ってくるから!」

「帰って来なくていいぞ」

「い・や・だ・☆」


タオルとドリンクだけ準備した花梨は、財布だけを持って走っていく。
よほど早く行きたいのだろう。あっという間に見えなくなった。





「…アイツ、今日は午前で終わりって知らねぇんじゃね?」


今思い出した、という風に咲山は呟く。


「「「「「…」」」」」


いや。まさか、な……



「花梨ーー!!!」


佐久間は走って追いかけた。







「後でメールすればいいだろ…」


鬼道は小さくため息をつくのだった。
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