なんとかなる…さ
□素直に
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「私、南沢先輩が好きです」
こう…どうしてこんないいタイミングでいてしまうんだろう…?
俺は同じクラスの女子が告白する場に逢ってしまった。
うぅ。二人がそこにいるから戻れないし……なんでここにいるんだよ俺ぇ…!
俺がここにいるのは、練習中にボールが飛んで行ったのを取りに来たからだ。飛ばしたのは俺。ボールを探すのに時間がかかって、ようやくボールを見つけて戻ろうとしたら、いつの間にかいた二人がここで告白していた。
そういえばここは告白する場所としても有名だったな。
嫌、だな…
南沢さんへの告白なんか見たくない。プレイボーイな南沢さんのことだ。付き合うに決まって…
「悪いけど、俺、好きなヤツがいるから」
「「え!?」」
初耳だった。
すぐに手を出すことで有名なあの南沢さんに好きな人がいる…?
「でも、私は南沢先輩が「じゃあさ、」
女子の声を遮り南沢さんは物欲しそうな目で自分の髪をかき上げながら言った。
「君が慰めてくれんの?」
女子が答えるよりも早く、南沢さんは唇を重ねた。抵抗する女子をきつく抱きしめ深く濃密なキス。
ズキン。
心に穴が空いたような気分になった。哀しくて哀しくて。どうしてそう思うのかも分からずに、俺は二人から目を逸らした。
「ぃやッ!!」
女子はそう叫び、南沢さんをひっぱたいて泣きながら走り去った。南沢さんは「痛って」と呟いてからしばらく動かなかった。
「…出てこいよ」
ドキッと固まった。
南沢さんはじっと俺の方を睨んだ。初めからバレていたようだ。
「気づいて、いたんですか?」
「まぁ、お前だったからな」
俺だったから…?
その言葉に違和感を持ちながらも、練習に戻ろうとした。早くしないと信助が探しに来る。
「…天馬」
「はい?」
振り向くと南沢さんは驚いたように俺を凝視していた。
「お前…さっきのを見て、何も思わなかったのか?」
「な、んで、ですか?」
俺は何も……
イタイ…カナシイ…
…あれ?なんで哀しいんだ?
「だから、お前はさっきのを見て何も感じなかったのかって聞いたんだよ」
「なにを、感じるんですか?」
意味が分からない。
「…お前、鈍いな」
「ぇ?」
鈍いって?なんて思ってたら、急に南沢さんに抱きしめられた。
「み、南沢さん!?」
「俺さ、天馬が好きなんだよね」
ぎゅっと抱きしめながら耳元でそう囁かれた。
すき。スキ。好き。
頭の中でその言葉が繰り返される。理解すると同時に体が熱くなった。
「おおお俺は、おぉお男ですよ??」
「知ってる」
「知ってるって、ひゃあ!?ど、どこ触ってるんですか!!」
尻を揉まれた。
いくら暴れても南沢さんは放してくれない。それどころか抱きしめる力を強くした。
「いちいち煩いな。黙って頷け。んで鳴け」
「それってどぅい…アッ!ら、め」
首を舐められ噛み付かれ、自分でもこんな声が出るのかと驚いた。
「やっぱり、誘うのが上手いな」
誘うって、なに?
そう聞こうとしたら南沢さんはキスをしてきた。南沢さんが入ってきて俺をきつく絡み取る。息ができないくらい激しくて、されるがままに南沢さんに応えていた。
「み、なみ…さゎ、さん」
「篤志でいい」
「で、でも、あァ、そこゎ」
「篤志でいい」
気持ち良くて力が抜ける。ズルズルと落ちていく。
「天馬〜?」
信助の声だ。声はどんどん大きくなって……こ、こっちに来る!!
「あ、南沢さん。天馬見ませんで…天馬!大丈夫!?顔、真っ赤だよ!?」
「コイツ、風邪引いてたらしくてな」
「え!?天馬、なんで言わなかったんだよ!」
「西園。俺はコイツを保健室に連れてくから、神童に言っててくれねぇか?」
「はい!天馬、ちゃんと休まなきゃダメだよ?」
信助はボールを持っていなくなった。
「…」
「睨むな。このまま終わりにしてほしかったのか?」
オワリ。そう聞いた瞬間、嫌だと思った。
さっきまですごく気持ち良かったのに、今はそれだけじゃ嫌だった。なぜか分からないけどもっと、もっと………
「さ、邪魔者もいないし…ゆっくりヤるか」
ニヤリと笑う南沢さんが少し怖かった。
END
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塩宮さんとの相互リンク記念、南松でした。
ヤバめでごめんなさいm(_ _)m