銀魂 短編小説
□悪戯
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「お菓子はいらないから、イタズラさせて。」
「・・・は?」
「いや、え?今日何の日か知らないの?」
いや、知ってるもなにも今日は俗にいうハロウィンってやつで、それが仮装しながら「お菓子をくれなきゃイタズラするぞ」と町を練り歩く日であることぐらい知ってる。
だが、こいつは今なんつった。
「ね、いいでしょ。イタズラ」
いやいやいやいや
おかしいだろ。
なんで、イタズラすること前提なんだよ。
逆に今日が何の日か知らないのはお前なんじゃないかと思いながら、隣に座っている銀時をにらむ。
しかし、んなのお構いなしに銀時は顔を近づける。
そして「ね?」と微笑みながら手を俺の膝に乗せる。
さすがに身の危険を感じ始めたので、その手をどけた。
「やめろ。」
「えー。せっかく久しぶりに土方と二人きりなのに」
たしかに、最近はテストだのなんだので二人だけで会うのは久しぶりだったが
「ここ、学校だろが」
そうだ、ここは学校の屋上で、今は昼休みなのだ。
幸い、少し肌寒くなってきたからか、今は俺ら以外の人影は見当たらない。が、いつ誰が来るともわからない。
その上、こいつの言うイタズラが、ただのイタズラで終わるとは到底思えなかった。
てか、イタズラ自体ごめんだ。
俺は少々冷たくなった手をポケットに入れた。
「ねー土方ー」
こっちはまだ諦めておず、今度はあからさまに俺の太ももをまさぐってきた。
「おい、ちょっ」
付き合ってからのこいつの過剰とも言えるスキンシップには大分慣れてきたが、さすがに止めさせようと手を出そうとしたとき、ポケットの中で何かに当たった。
「・・・ほらよ」
手に当たったのは、あめ玉だった。
偶然、総悟が、ハロウィンだしあげまさぁとか何とか言って渡されたものだった。
それを銀時に渡した。
あめ玉だってお菓子のうちだろう。
案の定、少しイヤな顔でえー、土方ヒドーイなんて言われたが。
一応受け取ったということは諦めてくれたのか。
とりあえず、この場の危機は去ったと思い、ほっと胸を撫で下ろす。
と同時に、予鈴のチャイムが鳴った。
銀時におい行くぞと言って立ち上がろうとした時、不意に腕をがしっと捕まれた。
「なんだ・・・っん」
言葉は最後まで言えず、口を塞がれていた。
突然のことで、自分がキスされていると自覚するまで数秒かかった。
あっけにとられる俺をよそに、向こうは俺の頭に手を当てて、逃げられないようにと無遠慮に舌を入れてくる。
「・・・っ・・んっ?」
そして、舌と一緒に入ってきたのはさっき渡したあめ玉。
口の中で甘いミルクの味が広がる。
それからいくらかして、満足したのか銀時がゆっくりと口を離した。
そして、してやったりといった顔で
「これで、お菓子もらったことにならないね」
と言った。
「おまっ・・・」
「ははっ、顔真っ赤」
確かに、さっきのキスのせいで少し顔は赤くなったかもしれないが。
いきなりする奴があるか。
「・・・嬉しかったんじゃないの?」
久しぶりだったし、と銀時は続ける。
俺はというと、熱が顔に集中したのを見られないよう顔を背けた。
確かに、嬉しくないわけではなかったが、いきなりすぎやしないか。
そんな俺を見ながら、また銀時が口を開いた。
「そういうわけだし、
今日、俺ん家くるでしょ?」
そういわけってどういうわけだ、という言葉を飲み込んで、俺は頷くしかなかった。
口の中にはまだ甘いあめ玉が残っていた。