銀魂 短編小説

□正しいマフラーの使い方
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マフラーを見つけた。

ピンク、というより、桜色、といったほうがしっくりくる、淡く優しい色をしたマフラーだった。



その日俺は、いつものように、弱味でも握ってやろうと土方の部屋をあさっていた。
机やら襖やらを探して、たいして面白いものも見つからず、タンスに手をかけた時だった。
タンスの奥の方に大切そうにしまわれた、使った形跡のないそれを見つけたのは。


明らかに女物のそれは、長いことタンスの中に入っていたのか、タンスの木の匂いがした。それは、何処か切なくて哀しい匂いだった。
それを見た時、一番最初に頭をよぎったのは、俺の姉、ミツバの顔。俺とよく似た顔をした、それでいて、とても優しい、綺麗な顔で笑う人。



思いだしたとたん、チクリと痛む俺の胸。ミツバがいなくなってから、もうすでに、かなりの時間がたっているはずなのに、ちょっと思い出した途端、直ぐにこれだ。どれ程、俺にとって大きな存在だったか思い知る。


「姉上...」


寂しく、1人呟いた。




土方さんのタンスからでてきたそれ。
大方、姉上に渡そうとして出来ずに、そのままタンスにいれてしまったのだろう。
姉上がいなくなってからもタンスにあるのは、きっとあの人にとっても、姉上の存在感が大きかったから。

たとえ、今、あの人には他に大切な人がいるとしても、それでも、姉上はあの人にとってかけがえのない人だったんだ。





ふと、目を瞑って姉上がこのマフラーをしているところを想像してみた。
あの、優しい顔で、うれしそうに笑った姉上。その首もとには、あの、桜色のマフラー。
それは、とても似合っているように思えた。

そして、その横で嬉しそうに微笑む、土方さん。


そこまで想像して、俺の胸がチクリと痛んだ。
さっきの、姉上を思い出した時とは違う、胸の痛み。

それが何の感情なのか、それには気付かないフリをして、マフラーをタンスにしまって、土方さんの部屋を後にした。







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