長編
□第2章
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ふいに、煙草の匂いがした。
その匂いがアイツがいつも吸っている銘柄といっしょだったから、あぁアイツも屋上に来てたのか、と何故か少しだけ安心して、階段を登る足が心なしか、ほんの少し速くなった。
「....土方さん?」
囁くような声でよんで、ドアに手をかけてゆっくり開けた。
「....?」
沖田は目を見開いた。そこにはやはり土方がいた。
しかしその隣にいたのは、
「...旦那?」
間違いない、あれは坂田銀時だ。
なぜ、土方さんが万事屋の旦那といっしょにいる?
そしてあの土方が、鬼の副長と呼ばれる土方が
「泣いてる...?」
銀時の肩をかりて泣いている。
にわかには信じられなかった。
あの土方が他人に弱味を見せてるどころか、泣いているなんて。
....しかも、銀時相手に。
沖田のなかで何かが軋んだ。
なんで、こんな気分になるのか分からない。
別に、土方がどこで何しようと関係ない。
関係ないはずなのに、
「....なんなんでィ、コレ」
なんなんだろうか、この胸のどうしようもなさは。
沖田は何も出来ずドアの前で立ちすくんでいた。
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