GS
□2004/12/12 氷室
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←氷室×あなた→
私の目の前で、くるくると表情を変えながら話す少女。
あえて言葉にしないが、実に愛くるしい。
けれど失敗した。私は読み誤ったのだ。
彼女は可愛い。
実に可愛い。
愛らしく、可憐であり─
現在、私が一番大事に感じている少女だ。
だが彼女は生徒。
しかも私自身が彼女の担任という事実。
それなのに私としたことが…っ!
彼女を自室に連れ込んでしまったのである。
い、いや…っ。
決して自分から誘ったわけでは…。
彼女があまりにも可愛らしく私を見上げながら部屋が見たいというので、つ、つい…。
ああっ!
自分の不甲斐なさが情けない。
煩悩ひとつでこの様だ。
しかしながら、彼女の黒目がちな美しい瞳に見つめられると己を保っていられなくなる…。
彼女を前にしていればいるほど、その傾向は強くなる一方だ。
心苦しいが早々に帰宅を促そう。
がっ!
「…すいません、先生」
「いや、問題ない」
などと何を答えているのだ、私!
「私のベッドだ。気にするな」
などと何を抜かしているのだ、私!
彼女の体調が悪くなったのは予想外の展開。
介抱するのは人間として間違った選択ではない。
しかし教師としては、教え子が自室のベッドの上……
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ぐはあっ!
い、いいいいいいいいいかんだろうっ!
しかし。
彼女を居間のソファに移す。
もしくは帰らせる。
・・・できるわけがない。
やはりここは人間として。教師として。
いや、男として。
彼女の為に行動したい。
が…このままでは私の心拍数が上がるばかり。
いったんこの場を離れるのが上策だろう。
それで彼女も静かに休めれば一石二鳥だ。
「私は居間にいる。君はしばらくそこで休むといい。夕方には家に送ろう」
けれど。
「……は…ぃ」
彼女のか細く揺れる声が気にかかる。
「どうした」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「言いなさい」
「…そばに、いてください」
ぐらり。
理性が揺らぐ。
「…君は私を殺す気か」
「え?」
「ふざけていないで寝ることだ。これ以上私を困らせないでくれ」
動揺を隠すためにとっさに口から出た言葉。
「…はい」
寝室を出たとたん、全身の力が抜け落ちる。
「…あ、煽ってどうするのだ…」
煽られた私が言えた義理でもないが…。
ともかく危機は脱した。
これで道を踏み外さずにすんだのだ。
彼女といるとどうしても欲望が先行しそうになる。
それは避けなくてはならない。
─卒業までは。
教師という職業に誇りがある。
欲に駆られてそれを捨てたくはないし、彼女に見られたくもない。
いつまでも尊敬に値する教師として彼女の目に映りたいと思う。
しかしそんな自己の傲慢が時折彼女を傷つける。
先刻の彼女の弱々しい声。
傷つけてしまった。