GS
□2005/08/24 鈴鹿
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←鈴鹿×あなた→
夏休み。
けれどバスケ部エースの鈴鹿に休みはない。
毎年恒例の夏合宿では、力尽きるまでボールを追って走る。
それをつらいと感じたことはない。
やはりバスケは自分にとって、なくてはならないものだと思う。
なのでチーム内での仮試合でも、がぜん気合が入るのだが…。
(こんなに熱いのはそれだけじゃねぇだろ、俺)
などと考える。
部活に気合いが入るのは好きだから。
生きがいだから。
それと。
(それと…)
「………………」
どうも口で言えそうにない鈴鹿が、ちらりと体育館の入口を見る。
すると、ふわり。
それに気づいて、雲のように、空のようにやわらかく微笑む少女の姿。
(…よう。また来てんな。……よし)
心中ではいろいろ思っているものの、顔には出さず無言のまま瞳で答える。
鈴鹿的には。
(女ごときにデレデレできるかよ)
という気持ちで、あまり反応しないようにしているのだが。
そういう時の鈴鹿はふだんの粗暴さが消えていて―
『ああッ、見ているこっちがはずかしいッ!!』
ぐらい、優しい瞳をしていたりする。
もちろん本人に自覚はなく。
だからこそ。
「いっや〜。あいかわらずカワイイっスねえぇ。先輩のカノジョ…」
「ばっ、何言ってやがッ」
「だね〜。ホント羨ましいわ。いつゲットしたわけ?」
「ち、違うッ」
『彼女』を否定する鈴鹿に、わらわらと集まってくるチームメイトたち。
最初はからかい半分、嫉妬半分だった彼らも、最近では全力をかけて鈴鹿をイジっている。
どうしてって……
(((ラブラブなんだよーッッ)))
↑部員たちの心の叫び。
そりゃあもう。
嫉妬する気も萎えるほどに……。
なにも人前でチューしているとか、手作り弁当をあ〜んしているわけでもないのだけど。
学園一の美少女とうたわれる彼女が微笑むのが鈴鹿だけだったり。
違うクラスなのに気づけば一緒にいたり。
少女がそばにいると鈴鹿の雰囲気が「野獣」から「王子さま」だったり。
それはどこからどう見ても相思相愛で。
お似合いで。
バスケ部の……いや、体育館を使っている部活の野郎どもは「あわよくば…」などと、それなりにアピールしたりなんかしたのだが………玉砕。
告白を受けるたびに、頬をバラ色に染めながら「好きな人がいるんです」と言う彼女。
それってどうやったって鈴鹿である。
そんなこんなで。
(((これでつき合ってない二人ってどういうこと?)))
になるわけである。
でもそんなところが鈴鹿らしくて。
チームメイト達はからかいながらも、心の中では「がんばれよッ」とエールを送っていた。
まあ、当の鈴鹿にはまったく通じていなかったりするのだが……。