GS
□2005/11/18 三原
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←三原×あなた→
はらはらと。
はらはらと。
くもり空を背景に舞い落ちてくるもの。
金色の落ち葉。
秋の森林公園はイチョウ並木が見事だった。
空も地面も金に染めるさま。
雪のようで。
夢のようで。
「……きれい」
少女はためいきをついた。
まるでこぼれ落ちるようなつぶやき。
「・・ふふ」
横で色が小さく笑った。
「三原くん?」
「君はいいね」
色は少女を見ながら微笑んでいた。
「?」
「ねえ」
色がふと頭上に視線をむけた。
「舞い踊る落ち葉…。それはよく使われる表現だね」
扇形の葉を見上げている。
「…うん」
少女もふたたび、色と同じように見た。
色の言動にはつながりがなくて、いつも突飛。
聞いても答えてくれないことも多い。
それでも。
となりにいる少女の表情はおだやかだった。
色の性格。
そんなことなどとっくに受け入れている。
だから今も色がなにを言うのか、ただ同じ目線で待っていた。
色は少女の思い気づいているか、いないのか。
かわらず、話つづける。
「でもそれを使う人たちは本当にわかっているのかな」
「?」
「本当に心からそう思っている人はどれくらいいるんだろうね」
言った拍子に。
はらり。
色の頬をなでるように、金色の葉が落ちる。
それに色は瞳をやわらげた。
「美しいね」
「うん」
少女が頷く。
「僕はね。心でなにかを感じるとき、魂をのせている。そこに嘘はない。心で感じた真実を言葉にするんだ」
「うん」
「だから僕が美しいと言ったものは、本当に美しいんだよ。この落ち葉だってそう。真実に美しい」
「…うん」
そう言った色はとてもきれいで。
少女は、
(あなたのほうがきれいだよ)
そう思った。
落ち葉の中にいる色。
最高にきれいで。
異世界のようで。
(このままずっと見ていたい)
「ん…?」
視線に気づいたのか。
見惚れる少女をふ、と色が見つめた。
「……本当に」
そう言って、色がきれいに口の端をあげた。
極上の笑み。
そして。
「君は美しいね」
さらりと言った。
だから少女は最初、なにを言われたのかわからなかった。
「……え?」
ぼんやりつぶやいてしまう。
「わからないの?」
色がもっと笑みを深くする。
「この世で君以上に美しいものはない、と伝えたのだけど」
「………え」
(………え)
(……え?)
(!!!!!)
今度こそ意味をしっかり理解した少女は、どんな顔をしていいのかわからなくなった。
頬が桜色に染まる。
その姿に。
「ねえ。僕は君を困らせてしまったかな」
美眉を下げながら、色が少女の顔をのぞきこんだ。
「……困った?」
色のほうが困ったような顔をして。
天使のようだった。
だから少女の心も落ちついて、笑う。
「そんなことないよ。いきなりだからテレちゃっただけ」
「そう。よかった」
色もほっとしたように笑う。
「ならもうひとつ言っていいかな」
「?いいよ?」
「君がほしい」
「…え?」
「君がほしいんだ」
「……え」
「わからない?体がほしいんだよ。君を抱きたい」
「!」
少女は真っ赤になった。
桜色ではなく真っ赤。
「こ、困るよ」
そう言って、色から視線をはずす。
本当は困ったというより。
びっくりして。
ドキドキして。
わけがわからなくなったのだ。
(……だけど。)
少女は思う。
もう「困る」と言ってしまった。
さきほどの反応からして、しばらくはこの話題を避けてくれるだろう。
つきあってまだ3日。
心の準備など全然できていなかった。
なのに。
「だめだよ」
色がぎゅっと手を握った。
「今日は帰さない」
キスしそうなほどちかくに色の瞳。
まっすぐに見つめる、その視線。
思わず息をのんだ。
「み、三原くん…」
「君がほしい」
(覚悟なんてできてない)
「本当に君が欲しいんだ」
(準備なんてできてない)
「ねえ。本当に─」
(これから私がどうなるかなんて想像もつかない)
「我慢できないんだ」
(でも…)
この誘惑を無視できるひとがいるだろうか。
「大切にしてくれる…?」
ふるえる唇からでた少女の言葉に。
色が最高にきれいに笑う。
「魂にかけて」
きっぱりと。
はっきりと。
迷いなく、誓われて。
「…うん」
少女は色の手を握り返した。
落ち葉が、舞い踊る。
→終←
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