GS2
□2006/12/24 針谷
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←針谷×あなた→
クリスマスパーティー。
ここぞとばかりに一年生から三年生まで―
ありとあらゆる男子のナンパ攻めにあっていた少女を、針谷がかついで逃げた。
「くっそ、このドレス、つるつるすんな」
廊下を走りながら、針谷が舌打ちする。
「は、針谷くん、もういいよ。おろして」
「だめだ」
針谷がきっぱりと言い切った。
「だって、お、重いでしょう」
「重くねーって」
「で、でもそんな筋肉あるほうでも」
荷物のように抱えられながらも、いつまでも抵抗する少女に針谷はため息をついた。
追手がいないのを確認すると、その場に止まる。
ちょうどクリスマスツリーの前。
窓からは舞い落ちる雪が見えた。
「お前、男ナメてんの?これぐらい軽いっつの」
そう言って、かついでいた少女を今度はお姫さま抱きした。
「きゃ」
「こんなんだって簡単にできるっつの」
「すごい・・」
「だろ?だからお前、俺のこと好きになれよ」
「え」
少女の瞳が見開く。
針谷が瞳をそらさず、もっと顔を近づけた。
「俺サマのことを好きになれって言ってんだ」
「え・・」
言葉が出ないらしい少女の顔を見て、針谷が笑った。
「今日しか言わねえからな。こんなこと面と向かって言うなんて聖夜しかねえぞ。いわば、お買い得ってやつだな、うん」
「・・・・・・」
一人でうんうん頷いている針谷を少女がじっと見つめた。
「ん?なんだ」
「い、今の本当・・に・・」
「当たり前だろ。見ろよこれ」
針谷がぐるりとあたりを見回す。
「ツリーにパーティー、ドレスに雪。んで、俺とお前」
「?」
「・・これだけそろってたら我慢なんてできねえよ。お前が好きだ」
その時の針谷の顔。
もう笑い顔ではなく、どこまでも本気を思わせる表情だった。
少女の頬が桃色に染まりだす。
それは拒否している顔ではなく。
「イエスってことでいいんだよな」
針谷が聞くと、少女が小さく、とても小さくうなずいた。
ふ、と針谷が笑う。
「ならキスするか」
お姫さま抱きのまま、少女の耳元にささやく。
「降る雪が全部とけるくらい・・・そんなキス、しよう」
抱いている少女の体が揺れた。
「こっち見ろよ」
「・・・で、でも・・」
「いいから」
「・・は、針谷くん」
「俺を見ろ」
「・・・・・・」
「好きだ」
「・・・・・・」
「好きだ」
二度目の告白で少女が顔をあげた。
二人の視線がぶつかる。
「お前が好きだ」
もう一度言われて、少女の瞳が揺れた。
そして。
睫毛を震わせながら目をつぶる。
「・・聖夜に感謝だな」
そう言って。
針谷は唇を近づけた。
お互いの唇が触れる寸前、まるで歌うような声で針谷がささやいた言葉。
「メリークリスマス」
窓の外で舞っていたはずの雪。
いつのまにかやんでいた。
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