GS2

□2007/01/02 若王子
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元日。


「今から迎えに行くから」


そう佐伯から電話があって。


少女はいそいそと晴れ着に袖をとおしていた。


今日のためにバイトをして買った衣装。


大好きな佐伯に見てもらいたい。


『声が聞きたくなったら電話してもいいですか?』


そう言った若王子からは連絡はなく。


冬休みに入り、年が明けた。


時間というのは不思議なもので。


現実感がないことが起こると、どうとでも自分で理由をつけてしまうらしい。


あれは冗談だった。


からかわれただけだった。


そう思ってしまえば。


年賀状以外の目立ったアプローチをしてこない若王子に対しての印象も「担任」にもどりつつあった。


あれは幻だったのかもしれない。


そう考えはじめた少女の耳に玄関チャイムが聞こえた。


時間からして佐伯だろう。


少女が階段を降りる。


「え………」


しかし目の前にいたのは佐伯ではなく。


「あけましておめでとう」


若王子だった。


「先生……どうして」


「行きましょうか。初詣」


「え」


「初詣です。今日は元旦でしょう。神さまに挨拶しにいこう」


「ま、待ってください。私は佐伯くんと」


「約束していたんですよね」


「え」


「でも無理じゃないかな」


若王子が一枚の写真を出した。


「佐伯くんのデートをすっぽかすのと、この写真を見られるの。どっちがいい?」


少女の目が見開く。


それはクリスマスパーティーのものだった。


若王子が少女を後ろから抱きしめている写真。


「こ、これ……」


「よく撮れているでしょう?」


若王子はゆったりと笑った。


「さあ、行きましょうか」
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