GS2

□2007/05/26 若王子
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『私に触れて…ッ』


そう言って、少女が若王子にすがりついた日。


(俺はお前を見限った)


それまでしていた電話も。


メールも。


佐伯は一切しなくなった。


(だって意味ないだろ)


学園でも顔を見ず。


少女が泣きそうな瞳で腕をとってきても、無言で振り払った。


(当たり前だろ。当たり前だ)


少女がなにをしたか。


自分の前でどうなっていたか。


(あんな格好で若王子を求めた)


瞳をうるませて。


頬を赤裸々にそめて。


(すがりついた)


それは裏切りだろう。


つき合い始めて数ヶ月。


最初に笑いかけてきたのは少女。


告白してきたのも少女。


(それを、お前は…)


佐伯はゆっくりと視線を上げた。


教室。


授業中。


英語教師の言葉は聞こえていなかった。


佐伯の視線は、ただひとつ。


前方の席に座る少女の背中だけに向けられている。


少女の謝罪を拒み続けていた佐伯が唯一、相手を見つめることができる時間。


もちろん。


少女はその事を知らない。
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