NOGS
□2007/07/20 ラブレボ
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少女の部屋に集まった全員。
なぜ?
答えは、少女の兄が「連絡事項」があると言って集めたからだった。
資料を渡され、皆がリビングのソファで兄の説明を聞いている。
どうやら外装工事をするらしい。
そうすると、ベランダすべてがシートで覆われることや、それなりのニオイや音がするので、その期間は反対側の部屋にうつることができるという話だった。
橘剣之助は資料に目を通しながらも、ベランダ近くで洗濯物をたたんでいる少女を見ていた。
「……ふぅ」
なにを思っているのか、少女はぼんやりしている。
(ずいぶん、やせた…)
剣之助は思っていた。
出会った頃の「壁」のような体はほっそりし、肉にうもれていたパーツが姿をあらわしていた。
きらきらした大きな瞳。
さくらんぼのような可愛らしい唇。
優美な目元。
兄ゆずりの端整な顔だち…。
そんな時。
「ヒトミ。大丈夫か?」
兄が声をかけた。
「…っ」
拍子に、少女がハンガーで指を傷つける。
「ヒトミッ!」
剣之助が動く前に、兄が動いた。
なんていう速さ。
脳が指令を出す前に体が動いたという印象。
普段は「ふつう」を装っていても、剣之助は武道を叩き込まれている。
それが。
(完全に負けた)
それがただの運動神経から起こることではないと剣之助はわかっていた。
(恋だろ)
兄は妹に恋している。
いや、愛している。
「大丈夫か?」
兄が少女の指をなんの躊躇もなく、くわえる。
いきすぎた場面。
けれど。
もっといきすぎているのは少女の表情だった。
頬が、赤い。
兄の行動を嫌悪して抵抗するのではなく。
頬を染めながら、兄を見つめている。
(わかってるのかよ、その意味を…)
大家の娘は。
先輩は。
自分の大切な相談相手は。
(わかってるんスか)
丁寧に消毒され、絆創膏をはられ。
(わかってるんスか)
少女は剣之助の視線に気づかない。
気づくわけもない。
兄が。
「ごめん。待たせたね」
話を再開した。