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□2008/12/19 天童
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アウトローの雰囲気をかもしだす壬は、事実もてる。


『最初の相手は天童壬。やさしくてうまい』


そんな噂が流れてどれくらいたつだろう。


高1の時につきあった上級生が言ったらしいその言葉は今でも効力をもっている。


『せ、先輩っ、私としてくださいっ』


そんなことを言われるのも珍しくなかった。


悪友たちには入れ食いだのなんだの羨ましがられるが、壬にとってはどうでもいいことだった。


最初は断っていた。


『面倒なんだよ』


『あんたのこと好きじゃないし』


『つきあってもねぇだろ?』


なのに、壬の前に立つ異性たちはひるまなかった。


ホテル代は自分が出すと言う。


一回だけでも十分だと言う。


つきまとうつもりはないと言う。


(だったら断る理由もねぇし)


それなりに性欲もある年齢。


誘われるままに肌を重ねてきた。


自分より弱い相手を傷つけることを望まないのが壬だった。


だから異性には優しかった。


初めてだということを労わって。


抱き合うのだから、その時だけは相手に集中した。


それでも。


射精の瞬間以外に感じるものは何もなく。


いつも思っていた。


夢見る思春期の少女たち。


壬の端整な外見と、不良というステータスだけで己の大切なものをさしだしてくる。


そしてその後は。


ただ新しい恋へ向かっていく。


(俺は道具かよ)


自分の意思で何人も抱いてきた。


けれど思わずにはいられない。


(俺は下半身だけありゃいいのかよ)


価値とか。


存在理由とか。


生きる意味とか。


(そんなごたいそうなことを言いたいんじゃねぇ……俺はただ)


ただ。


「…くそッ」


壬が舌を打つ。


「どうしたの?」


女生徒が驚いたように壬を見た。


「なんでもねぇ」


「そ?だったらどうする?行く?ホテル」


「…………」


壬は女生徒の体を見た。


制服の上からでもわかる大きな胸。


おしげもなく制服のスカートから出ている太もも。


正直、たまっていた。


いつも夜は悶々と少女のことを思い浮かべてしまうことが多かったから。


だからといって自慰をする気にはならず。


そんなことをしたら。


(もうあいつに会えそうにねぇし…)


きっと少女は壬の欲求を毛ほども感じたことはないだろう。


そんなきらきらした相手を前に汚れた妄想をぶちまけた自分では、きっと立っていられないと思った。


だからこそ。


壬の体はもっと安定した快楽を得たいと訴えていた。


今、目の前にいる異性との選択肢。


知っている女友達と寝る。


お互いの体を舐めて、入れて、果てる。


簡単でお手軽な方法だった。


少女のかわりに、とまでは言わないけれど。


少女によってたまった熱を放出したいのは事実だった。


それに。


イライラとしていた。


最近の壬を「らしくない」と表現するまわりの反応・評価。


反発したい気持ちも手伝って。


「そうだな…行くか」


女生徒の肩に手をかけて歩き出した。
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