NOGS

□2007/07/20 ラブレボ
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すべての話が終わった後。


また、剣之助は少女を見ていた。


見つめて。


見つめて。


ふと視線を感じてふりかえると、兄が自分を見ていた。


ぎくりとした。


嫉妬。


憎悪。


その瞳にそんな色がないからこそ、ぎくりとした。


それこそ友好の色もない。


今、兄はなにを思って自分を見ているのか剣之助にはわからなかった。


わかることといえば。


皆が少女を見つめていたということ。


(この場にいる全員が、先輩を欲しいと思ってる)


会えば、ひとなつこい笑顔で笑ってくれる人を。


馬鹿みたいに人の問題に首をつっこんでしまう人を。


(いつのまにか好きになってた)


それでも動けないのは。


どこまでも少女の瞳が兄しか見ていないからで。


「あの」少女でも愛しつづけていた兄の技量があったわけで。


(ほかの奴らなら、気にならない)


全力でぶつかるし、負ける気なんてない。


(でも、あの人は別だ)


少女がどんなに姿を変えても、愛は変わらない。


自分たちは少女が痩せてきてから、やっとその中身に惹かれるようになったのだから。


理解したとき。


剣之助は人間の価値とはなんだろうと思った。


人間の価値。


視点。


印象。


決断。


目で見えるものが答えではなく。


心で見えるものが真実。


自分たちにはそれができなくて。


兄にはできる。


きっと兄は少女がもとの体にもどっても、見つめる瞳はやわらかいままなのだろう。


どこまでも真綿でつつむように愛するのだろう。


(最強の、ライバル…)


それはもう、


(親父より強い)


そう思う。


(はっきり言って、これは負け戦だ)


相手は最強。


自分より格上。


(未来なんて見えてる)


けれど。


なにもしないで終われるほど、少女の引力は弱くない。


惹かれて。


欲しくて。


抱きたい相手。


(いつだって先輩のことを考えてる)


「…逃げるわけにはいかないんスよ」


だから。


兄を見ながら呟くと。


ふ。


兄が微笑んだ。


それは中傷ではなく、歓待。


『好きになるのはかまわない。でも、負けるつもりはないからね』


そう言われたようだった。


剣之助は奥歯をかみしめた。


(明日から勝負…)


負けるとわかっていても自分はいく。


少しも見ることのできない勝機を求めていく。


(死に場所は俺が決める)


戦の、はじまり。



→終←


ひとえに兄ラブです。剣は2位。

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