TOG

□実は今でも
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「あ、この花、」


兄さんの要望でラントの裏山の花畑に来た
何を見つけたのか急に走り出した兄さんの進行方向の先に、いかにも兄さんに害を及ぼす小石があったので銃で撃って弾き 飛ばした
小石のくせに兄さんを転ばせようだなんて許しません


「覚えてるかヒューバート、昔お前にあげた花と同じだ」

「そうですね、もちろん覚えていますよ」


地面に座って青い花にそっと触れる兄さんの横に座る
兄さんの笑顔を独り占め出来て、少し口元が緩んだが急いで手で隠した


「今でも本の栞として使ってますよ」

「そ、そうか、よかった」


頬を赤く染めて笑う兄さん
今とてつもなく幸せです


「それに、あの時すごいこと言ってたよな」

「兄弟で結婚、でしょう?」

「う、うん」


兄さんは恥ずかしそうに地面を弄り始めて、ちらっと僕の方を見た
誘ってるんですか、兄さん


「流石に大人になって、そんなこと無理だって分かってるけどさ、ずっと一緒にいられるならヒューバートと、その、結婚してもいいかなー、なんて…」

「兄さん…」

確かに大人に近付いてきて、明らかに現実的ではないと思ったが、
今の兄さんの笑顔を見たら兄弟で結婚しても良いという法をつくれそうだ


「結婚しなくても、ヒューバートが側にいてくれたらそれでいいんだ
なあヒューバート、俺の側にいてくれ」

「もちろんです、兄さん」


なんて純粋で無垢な人なんだ
ありのままの自分で僕を好きでいてくれる兄さんがこんなにも愛おしい


「兄さん、僕は軍を退役してオズウェル家と縁を切ろうと思っています」

「え、ヒューバート、それは…」

「兄さんの側で、兄さんとともにありたい、そう願ってはいけませんか」

「ヒュー、バート…っ」


はらりと兄さんの瞳から綺麗な雫がこぼれ落ちて、僕はそれをそっと拭い、軽いキスを贈る


「ヒューバート、好き、だ」

「僕もです、兄さん」


強く抱きしめあったまま花畑にゆっくりと転がった





僕らを祝福するかのように二匹の蝶が舞った






おわり

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