TOG
□もしも一緒だったなら
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今日もどうやらアスベル一行は野宿で決まりそうだった
準備をする仲間から外れてアスベルは一人、右足を庇いながら火にくべる枝を拾っていた
「…それほど深い傷でもないし、大丈夫だろうな」
苦笑しつつ足の痛みに耐えて枝を拾う
戦闘中に不注意だった自分の責任だからシェリアに治してもらうまでもない、と傷口に包帯を巻いただけにした
「…守るとか言っておきながら、これだからな」
自分に呆れるなと自嘲気味に笑うことで痛みを凌ごうと思っていた
「兄さん、枝は集まりましたか」
「ヒュー、バート…」
ビクリと肩を震わせて振り返れば弟のヒューバートがいつの間にか近くまで来ていた
「あぁ、もう戻ろうかと思っていたんだ」
「そうですか…」
兄の言葉に表情を変えないまま軽く頷いて答えるヒューバート
アスベルはしゃがんでいた体制から、急に立ち上がってヒューバートに近づこうとした
「っ…!」
「…兄さん?」
足に負荷がかかったときに傷が疼く
「…な、なんでもないんだ」
「…嘘、ですね
怪我をしているのでしょう?どこが痛みますか」
はあ、とため息をつき、眉間にしわをよせて見せて下さい、としゃがんで足に触れてくるヒューバート
そんな弟の様子を見てアスベルは、心に足の怪我の痛みよりも重いそれが走った
「俺は、大丈夫だ」
「何が大丈夫なものですか、放っておいたら傷口に菌が入りますよ」
「…大丈夫だって、言ってるだろ!」
サッと右足を下げてヒューバートの手が触れないようにするアスベル
普段温厚であまり怒らない兄の姿を見てきたヒューバートは、アスベルの突然の行動に驚いて動きを止めた
「兄さん?」
「…好きでもない俺に、無理して付き合うことなんてしなくていいんだぞヒューバート、それに、兄さん、だなんて、無理して呼ばなくてもいい」
「兄さん、一体どうしたんです」
「俺のことを嫌っているのに、どうしてそんなこと…」
と、アスベルが言いかけたところで突然彼は膝から崩れ落ちてしまった
「兄さん!」
咄嗟にヒューバートはアスベルを支えて倒れるのを防ぐと、そっと地面に座らせる
「とりあえず治療します、話なら後で聞きますから」
「……」
ヒューバートはそっとアスベルの足に触れて傷口を探すと、目を見開いた
「こんなに深い傷をどうして放って置いたのですか!」
今だに出血しているそこに手を翳して治癒術を施す
痛々しい傷口は次第に塞がっていく
「どうして、」
「…はい?」
「どうしてヒューバートは俺に構うんだ、俺なんか嫌いなはずなのに」
アスベルは俯いて小さな声でヒューバートに語りかける
兄の言葉にまた驚いたヒューバートは治療する手はそのままに顔だけを勢いよく彼に向けた
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