さんぷる
□カウント6(漫画王道)
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side:K
「亀、近付きすぎ。暑い」
雑誌の撮影中、上田が不機嫌そうに言う。
「良いじゃん。その方が反響あるんだし」
ね?とカメラマンさんに同意を求めると、苦笑いを返すものの、味方はしてくれない。
「はいはい。わかったからこっちおいで」
ふて腐れる俺に、中丸が手を差し延べる。
「えー、中丸〜?」
ぶーたれたふりをしながらも中丸にもたれ掛かって、その瞳をじっと見つめる。
中丸は真顔で見つめ返すからおかしい。
吹き出しかけながらも、皆それぞれにポーズを決め、撮影は順調に終わった。
「亀は人に触りすぎだろ」
「末っ子キャラだから良いんですー。キャーキャー言われるんですー」
ふざけてそう言うと、聖は『うわ、こいつ感じ悪ぃ!』と笑う。
田口はゲームから目も離さずに、『得だよね』と気のない言葉。
得?
だったら良いのにな。
ほら、見てよ。
この横に座る仁との距離。
後5センチ。
ちょっと手を伸ばせば届くのに、この距離が、俺にはとてつもなく重いんだ。
甘えるフリならいつでも出来るけど、依存はしたくない。
触れると我慢出来なくなりそうで怖いからこそ、自分からなんて近付けないこの5センチ。
強くなるから、もう少し待って。
5センチの距離