さんぷる
□夢で見た不安(黒紫)
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ロケに向かうバスの中。
珍しく、ヒナが寝てる。
…かと思えば。
ロケ場所についた途端。
「そっち行ったらあかん!」
はしゃいで走り回るヤスとマルが怒られる。
「すばる、危ないやろ?」
今日使う道具に触ろうとしてたすばるが止められた。
「あそこのボルト、緩んでません?」
なんでお前が機材のチェックやってんねん。
「お前、何やってんの」
見かねて、口を挟む。
「1人でやってんのちゃうねんぞ」
頑張りすぎんのは、いつものことやけど。
今日のは、さすがにひどい。
「夢、見た」
「は?」
「ロケで怪我して、みんな居らんようになる夢」
アホか、って一蹴しようとして、止める。
「妙にリアルで、今日、やねん」
ヒナが、瞳を揺らしてそう言ったから。
「何が、怖いん?」
「何、やろ」
ヒナはぽかんとした顔で呆けたあと、考え始める。
居らんようになる、なんて。
例えば、オレがそこの機材蹴って、ソレが何故か倒れてきて、下敷きになって死んでまう、なんてどれくらいの確率?
しかも、みんな、て。
漠然とした不安。
はっきりすれば、少しは落ち着くから。
「ヨコが、珍しく怒ることちゃう?」
笑うと同時に、咳き込み始める。
なんや、余裕やん。
風邪で気ぃ弱なってただけかいな。
「休まんやろ?」
「休まん」
ほんまはちょっとでも休んだ方がええんやけど。
こいつが素直に休むわけがない。
「やったら、何とか今日1日保たせぇよ」
ヒナは、いつものように、八重歯を見せてにかっと笑った。