さんぷる
□感謝の気持ち(コヤシゲ)
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誕生日が嬉しくなくなるのって、いつからだろう。
年をとるのが嫌ってひともいるらしいけど、オレはまだまだ大人になりたい。
だから、誕生日はうきうきします。
「誕生日おめでとうございました、小山」
「…なんで。」
5月2日になった途端かかってきたシゲからの電話。
ちょっと浮かれたその声に、こっちのテンションがあがるはずもなく。
普通、かけてくるなら1日になった瞬間でしょ?
オレの誕生日、昨日じゃん。
語尾までちゃっかり過去形。
さすが秀才加藤シゲアキ。
「や、普通じゃ面白くないし」
「別にそんなとこに面白さ求めてない…」
「いいじゃん、その残念な感じも小山っぽい!」
なんかとーっても嬉しそうなシゲアキくん。
こやちゃん、ちょっとイラっときました。
「メールはしたじゃん」
オレの不機嫌そうな様子に気づいたのか、勝手に言い訳を始めるシゲ。
なんかオレの気分、お見通し?
「そーいやさ、どんなメール来た?面白いのあった?」
いつもだったら、笑いながら話せる話題。
でも、『なんでそんなことお前に言わなきゃなんないの?』なんて言葉が喉まで出てきて、あわてて口をつぐんだ。
子どもじゃないんだから、虫の居所が悪いってだけで、人を傷つけることなんてできない。
だとえそれが、親友のシゲでも。
「手越から『生まれてきてくれてありがとう』的なのもらったのが印象的かなー」
テゴシさんは、素面で愛を囁くからカッコイイ。
「寒っ!…ありえねー!!マジで送ってきたの?それ」
電話口で大爆笑のシゲ。
「小山に?!なんで小山が生まれたことに手越が感謝すんの?ないって、それは」
普段なら一緒に笑うとこだけど、なぜか妙にシゲの笑い声が癪に障った。
「少なくとも、この電話よりは嬉しかったよ!」
大声で怒鳴ると、ぶちっと電話を切る。
あっと思ったときには、もう通話終了の無機質な音が響いていた。
怒鳴ったのなんて、いつぶりだろう。
コントロールできない自分の気持ちに戸惑う。
シゲだって、びっくりしてるに違いない。
でも、今電話をしても自分の気持ちが説明できない。
オレは、ケータイを握り締めたまま、じっと俯いた。