夢小説

□傷
1ページ/5ページ

あいつはいつも、下を向いている。
あいつはとにかく変わってる。
夏なのに、長袖の服を着るし、クラスに打ち解けようともしねぇ。
いつも独りで、誰とも話そうとしない。
正直、何考えてんのかわかんねぇ。

「ななし。放課後国語科準備室まで来い」

『…はい』




ガラッ

『失礼します』

「おー、きたな。まぁ座れ」

そういうとななしは素直に従った。

『先生。私、早く帰りたいのですが…』

「あ、あぁ。悪りぃな。そのえっとだな…。
お前、なんか悩みとかあんのか??」

ななしはぴくりとも表情を変えずにじっと俺を見ていた。

『なぜですか??』

「いや、なんとなく??」

『ありません。それではさようなら』

「おい、ちょっとまてよ」

ぐいっと腕を掴めば、じわっと血が滲んだ。

「おまっ」

『っ、離して下さい!!』

気まずい沈黙が流れる。

「リスカ、か?」

ななしは黙ったまま答えない。

「保健室行くぞ。処置しねぇと」

そういって、肩を叩くと、びくっと震えた。

『ぃやっ!!』

パシン、と俺の手を叩いた。
ななしの目は恐怖一色だった。

『っ、ごめんなさい、先生。私、もう帰ります』

「おいまてよ!傷、手当しねぇと…」

『平気ですっ!!早く帰らないと、お父さんに…』

そこまでいって、ななしは走っていった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ