Long Dream Story

□私の服はドコですか?
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彼方がこの世界に来てから、約3日が経っていた。

静雄は昼間から深夜まで、借金の取り立ての仕事のために家にはいない。
彼方はその間ずっと家の中にいた。


平和島静雄に家から出るなとは言われていないけど、てか、お金ももらってるのだけど、家から出てもどこへ行けばいいのかわからないし…。
だから、1人で平和島静雄が家に帰ってくるのを、テレビを見ながら待ってた。
何度か平和島幽が出てるテレビも見て、ここがやはり"あの物語"の中の世界なのだと痛感した。


しかし、彼方がその生活に飽きてきたのが2日目の夜。
そして、今は3日目の朝。
今日は静雄の仕事は休みらしい。


「平和島……さん」


彼方はソファーの上で眠る静雄の体をゆさゆさと揺らすが、静雄は唸りつつもなかなか起きる気配を見せない。


「平和島…さんっ!」


彼方の心の中にはイライラが募っていく。
彼方が静雄の体を揺らす腕に力を込めたところで、静雄の腕が上がった。
そのままその腕を静雄は横に振った。
避ける暇などなく彼方の体に静雄の腕がぶつかる。


ドンッ!


鈍い音が響いた。
静雄の腕は彼方の体を真横に吹っ飛ばしていた。


いった…いったっ!


無様に床に転がった彼方は、わき腹の痛みに涙を浮かべる。


ほ、ね…折れた…。
痛い。
寝てたくせに。
何あのバカ力。
平和島静雄、怖い。
怖い。
……………殺す。


彼方は痛みに耐えながら、ふらふらと立ち上がり、台所に包丁を取りに向かおうとした。
その思考に良識や理性が入り込む余地はない。
何故なら、彼方を動かすものは、何よりも高い彼方自身のプライドだったから。



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