血の運命の部屋

□Il sentimento romantico del dottore matto
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「あなたって人は小学生みたいだ」

ボソッとジョルノがつぶやいた。その空気にとけ込んでしまう様な小さなかすれた声はちゃんと聞こえていたらしい。ジョルノの首を絞めるチョコラータは意味がわからないとでも言うようにジョルノを見下した。

「あ?どこがだよ」
「好きな子ほど虐めたくなるなんて、喜ぶ顔とかみたくないんですか?」

表情を変えずただただ、淡々と言っていくジョルノ。血なまぐさい部屋でジョルノはただただ、彼の愛情表現を受け入れた。
愛情表現に正しい答えはない。どのように表されるかは人それぞれだ。優しさに出るか、憎しみにでるか、加虐的にでるか、はたまた被虐的にでるか……愛情表現というのは面倒なわけで噛み合わない時もある。人それぞれ表されるそれは、伝わることもあれば空回りしてしまう事もあるのだ。
伝わっているのかいないのかは本人たちにしかわからない。ただ一つ言えるのは、ジョルノは彼がそう言う人間だと分かって今、首を絞められているのだ。

「無いね、俺が好きなのは絶望に満ちた表情だけだ」

はん、と鼻で笑うチョコラータは首を絞める力を少し強める。ギリっと言う音を立てて、肺に入ってくる空気が一気に少なくなる。ジョルノ少し苦しそうな表情をするがそれでも抵抗はしなかった。その苦しそうな表情をみて甘美な気持ちに包まれるのがチョコラータだ。ニヤリとでも効果音がつきそうな笑みをこぼす。そんな彼にふぅ……とジョルノはため息をついた。

「馬鹿ですねぇ」
「15,6のガキに言われたくねぇな」

また力が強くなる。皮膚にまでめり込んでいる手は弱めることを知らない。いつか首の骨が折れてしまうのではないのか。そもそも折る勢いで締め付けているのだが。
しかし、それでも折れないのはスタンド能力ではないし、ましてやジョルノが不死身だというわけでもない。これがチョコラータなりの愛情表現なのだ。死なない程度に痛めつけ苦しむ顔を眺める。それが彼の愛情表現。それを知っているから、彼は殺さないと分かっているからジョルノは抵抗しないのだった。
ジョルノはふと疑問に思った事を口に出した。

「絶望に満ちた表情とか、何がいいんですか」
「いいじゃあねぇか。他人の不幸は蜜の味ってやつだ、それに」
「それに?」
「俺によって傷ついていると思うと楽しくて仕方ないね。あの、どうしてと言っているかのような……上げて突き落とすやつがたまんねぇ」

楽しそうに言う彼にジョルノはため息をつく。……ため息と言っても吐く息がないのだが。
本当にこの男はゲス野郎だなとジョルノは思った。

「ふぅん、でも僕を殺さないのはなぜ?あなたは僕が絶望しながら死んだ顔が見たいのでしょう?」
「ま、そうなんだけど、まだ殺すのは惜しいんだよなぁ。だってお前、全然表情変わんねーし」

霞みゆく意識の中ジョルノは問いかける。答えは知っているが、こうでもしないと意識が飛んでしまうからだ。

「当たり前ですよ。表情変えたら殺されますもの、それに僕は貴方の喜んでいる顔が楽しいですから」

そう言うとチョコラータの力が緩んだ。それと同時に崩れ落ちる。早く早くと酸素を取り込むように呼吸をする。チョコラータは力の抜けているジョルノを見下しながら告げる。

「だから、被虐的になってるのか?お前らしくないな」
「……全くですよ、ね」

ジョルノの意識はそこで途切れた。倒れたジョルノを抱えあげて、チョコラータは血なまぐさい部屋をあとにする。ジョルノの首にはくっきりと締め付けた後が残っていた。

━これがイカレた医者の愛情表現━


後書き
終わった……書きたかった……チョコジョル……それだけだ…… 題名は 「Il sentimento romantico del dottore 」「正気でない医者の恋愛感情」という意味だ……

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