血の運命の部屋☆第二部☆

□ナースと悪魔、時々天使
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「悪魔悪魔って言うけどあんな可愛い子が悪魔なわけないだろ」
喫煙所でスクアーロが言った。どいつもこいつも騙されている。
「周りからの評判もいいし、患者からは慕われてて……悪い子には見えないですけど」
話題に上がっているジョルノ・ジョバァーナという奴は看護士である。優等生のような振る舞いで、頭の回転が早く、気が利いて、見目麗しい、と世間一般のこいつらやその他の人間は言った。そして患者は彼女を白衣の天使という。それか女神という。阿呆らしい。
「あ?あいつは悪魔だよ」
「それはお前がヤブだからだろ」
「殺すぞ」
何が優等生だ。あんな優等生がいてたまるか。傲慢で何考えてるかわからないあいつが天使?あいつが女神?そんなこと言ったら世の中は星人君子ばかりで溢れかえる。何も分かっていない奴らだ。確かにジョルノは外面がいい。それは認めよう。しかしあいつの本音はそこではなくて、私と2人になった時に現れる。図々しい事この上ないし、歳上への敬意が全く見られない。プライベートでも敬意が見られない。ケーキを買ってこいとか疲れたから帰りたいとか挙句の果てには「あんたの家まで連れて帰ってください」と強請る始末。面倒くさい女である。
兎角ジョルノはあいつらが言うような天使でも女神でもなく悪魔のような女であった。
「ま、貴方は全体的に信用出来ないですし」
「何とでもいえ」
一生騙されていろ、その方が幸せだぞ。
「でもさぁ本当に天使みたいな子だと思うわけよ俺は」
今度飲みに誘ってみるかとスクアーロが軽く言うと、ティッツァーノが頷く。
「外面だけだぞそれ」
「酷い言い様ですね」
何とでも言うがいいさ。事実は事実。
それに飲みに誘うのは構わんがあいつは絶対に行かないぞ。どうせ私が行かないと言ったら行かないからな。
「……ま、私は天使なんかより悪魔の方がいい。その方がアイツらしくていいし悪魔の方がずっと面白いし魅力がある」
だが悪魔は悪魔で悪くないのだ。むしろ天使よりもずっと良い。天使なんて綺麗なものより多少意地汚い悪魔の方が張合いがある。
「はぁ?」
「じゃ、帰るわ」
煙草の灰を落として火を消す。
噂をすればなんとやらという言葉があるように喫煙所を出るとそこにはいつもより様子が違うそいつがいた。
「あ」
「あ?そんなとこでしゃがみこんで何してんだよ」
「……」
「え」
壁にもたれかかって顔を塞ぐそいつこそ他称白衣の天使である。ジョルノは声に反応して上目気味に見上げた。真っ赤だ。よく熟れたトマトよろしく真っ赤だ。
ジョルノほおずおずと立ち上がりパチンと自分の頬を叩いた。夢か現か偽りかさっきの様子がなかったことになっているかのようにいつものジョルノに戻っている。
「チョコラータ、回診のお時間なので戻ってください」
「あ、ああ」
「……別にお話聞いてたわけじゃないので。偶々居合わせただけですので」
(絶対全部聞いてたじゃあねぇか)
それでは、と背を向けて走り出す。揺れる三つ編みを眺めていると背中を強く押された。
「何してんだ入り口で」
「邪魔ですよ」
せめてどけよと言ってくる2人が煩わしい。
うずくまってこちらを見ていたジョルノを思い出す。
「……やっぱり天使かもしれん」

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