血の運命の部屋☆第二部☆

□ストロベリームーンの勇気
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ストロベリームーンというのは「恋を叶えてくれる月」らしい。そもそも満月は昔のユダヤ人に至っては満月の夜にしか結婚しないというしきたりがある所まであった。それほどまでに満月というのは意味を持ち、それを現代風に無理矢理恋にこじつけたのがストロベリームーンと呼ばれるものらしい。
少しそれるがストロベリームーンは元々いちごが取れる時期に見られるただの赤みがかった月である。夕日と同じ。科学的に言ってしまえばなんとも当然でつまらないものなのだ。
そんなものに踊らされる世間がバカバカしい。
「でも面白くありませんか?」
月を見上げた彼は言う。月のような彼の髪色はそれこそ明るく眩い。穏やかに笑んだ彼は続ける。
「ちょっとした由来とか、噂とか。例えば占いなんかもそうですが……信じるだけで救われるというか、救われはしなくても人生がほんのちょっぴり豊かになった気がしませんか?」
なるほど彼は無駄を嫌うが、無駄の全てを嫌う訳では無いらしい。有益な無駄と無益な無駄という表現を用いるなら、有益な無駄ならあってもいいと。
「それにストロベリーだなんて、貴方にピッタリでしょう?」
「僕に?どうして」
「貴方の名前」
フーゴ、と彼は呟く。確かにそれはストロベリーを意味するがただそれだけで、何ら特別なことは無い。無いのだが。
何故だろう。彼に言われると少し特別な気がしてしまう。
「フーゴ、戻りましょうか。いくら夏でまだ夜遅くないとはいえ夜は冷えますから」
ベランダから踵を返してジョルノは歩き出した。2歩3歩歩くジョルノに後ろ髪を引かれる。もう少し、あと少し月に照らされている彼が見たいのに。
……自分でもおかしいと思うし迷信はあまり信じないタイプなのだが、今から行う行為はストロベリームーンが背中を押したからと言い訳をさせてもらおう。
「ジョルノ、僕と夕食でもどうですか……?奢るので」
僕を照らす太陽はその言葉に振り返って優しく微笑んだ。

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