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□サジタリウスでは射抜けない
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サジタリウスでは射抜けない

「ちょうど良かったです」
 ジョルノが嬉しそうに微笑んだ。それは赤と黒が混ざり合いそうな夕暮れ時のことである。ギアッチョが帰っている時の話であった。冬の寒さは体に応える。ここ最近厳しさが増した寒さにイライラしながらマフラーに顔を埋めていた所だ。帰ったらホットワインでも飲みたいものだと暖かな自宅に思いを馳せていた時である。ジョルノは寒さを感じているのかと思うぐらいニコニコしていた。ジョルノがこうして笑顔で話しかけてくるときは何らかの面倒事が増える前触れだとギアッチョは本能で察している。ジョルノは思慮深く腹黒い。本人に言えば「やだな、こんなにいたいけな学生なのに」と笑って返されるだけだろうが。
 この世の中には白と黒以外に灰色がある。ギアッチョは灰色が嫌いだった。元々ゼロかイチのような人間であるのは自分でも百も承知だったが灰色のようにまぜ合った色はなにか腑に落ちないのだ。ギアッチョは灰色のことを「譲歩したような色」と言う。それは彼なりの表現方法だが白と黒がそれぞれ譲歩して妥協した結果、という結論に至ったのである。
「お互い歩み寄ったって言い方は出来ないものですかね」
 そんなことを以前ジョルノが言ったものだが、彼には理解し難いものだったらしい。
 閑話休題。ジョルノに後ろから声を掛けられて振り向いた途端、冒頭の言葉である。
「なんか用かよ」
「車出してください」
「お前運転してたろ」
「ええ無免許ですが」
「無免許かよ! 捕まれ!」
「ギャングですのでそこは無法地帯ということで」
 そもそも免許取れる年齢じゃあないんですよね、という言葉に呆れていると、早く早くと急かされる。引っ張られる袖にイライラしながらも、彼はまだどこに行くのかすら聞いていない。
「待てよ。こんな時間からどこ行くっつーんだ」
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