血の運命の部屋

□ほの甘系短編小説
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1 愛の挨拶(ミスジョル)
ジョルノ視点

暖かな日が窓から射し込んでくる。僕は窓辺のソファに座って本を読んでいた。用意しておいた紅茶に角砂糖を入れ、くるくるとスプーンで混ぜる。すると、ほわっと漂うダージリンの香りが鼻をくすぐる。僕はそんな時間が好きだ。窓をふと見ると風で木がさわさわと動いている。
一口紅茶を飲むとドアからノックの音がした。本に目線を落としながら、

「どうぞ」

と声をかけると、ガチャリとドアが開く。

「ジョルノ」
「あぁ、ミスタでしたか」

声を聞いて誰かを判断する。でも僕は本から目線を外さない。ミスタはこちらに来て僕の隣に座った。
ミスタはあまり本を読まない。お前の読む本は難しすぎるんだと言われたのは一体いつだったか。そんなミスタの真逆の思考に僕は惹かれたのかもしれない。
僕は本を読みながらミスタに話し掛けた。

「ところで、何の用ですか?」
「え?いや…特に何もねぇけど、なにしてんのか気になってよぉ」

そうですか。と返事を返して自分がいれた紅茶を飲んで、ミスタにも紅茶を入れる。そしてまた本を読むのだ。僕が本を読むといつもミスタは覗き込んでくる。僕が本から目線を外さないと少しムッとしたように

「少しはこっち向いて話せよ」

と言う。別に目を合わせたくないわけではないのだ。ただ本を読んでいるだけで。はいはい、と軽く返事を返す。そしてやってくる無言の間。
はっきり言うと僕はこの無言の間が心地よい。ただ単に静か…も、好きだが誰か…特にミスタがいるこの静寂が心地よい。内心微笑みながら本を読み進める。この幸せの時間を噛み締めるように。
窓の外には小鳥が二羽、さえずっていた。いつの間に来たのだろう?
少しの間ミスタが黙っていたがふと口を開いた。さっきまでは見ていなかった思い人を少しぐらい見ようか。なんて考えてみる。

「なぁ…こっち向けよ。ジョルノ」
「全く…何なんですか…」

ふと顔を上げると同時に聞こえたリップ音。小さく鳴ったそれと風が吹いたのはほぼ同時だった。
一瞬思考が止まり、あぁキスされたのか。と分かったとたん顔が熱くなる。普段から挨拶がわりに周りからされるキス。しかしそう言う感じのキスではなくもっと恋人同士がする、そんなキス。少し嬉しくなる。

「お、赤くなった」
「うっ…煩いですよ!からかわないでください!」

そう言って照れ隠しに本に目線を落とすもどうも頭に入らない。嬉しい反面してやられた感があって悔しい。ミスタはしてやったりという顔をしてニヤニヤしていた。風は未だに吹いていて、小鳥たちはいつの間にかいなくなっていた。
パタンと本を閉じてミスタの方を向く。

「本の内容が分からなくなりました」
「ふーん…」
「さっきからドキドキします」
「なら俺と…」

そして僕からするリップ音。ミスタは何があったという風に固まっていた。だからさっきの仕返しとばかりに、言ってやった。

「それもこれも、あなたのせいです」


クラシックの「愛の挨拶」聞いてたら書きたくなってしまった一品。予想より長くなりたじたじ。但し反動で次は異常に短くなりそうな予感…
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