長編小説部屋

□Episode.09
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「ねぇ、あの本に載ってたモンスターの事なんだけど……」
「文字が読めないから代わりに読んで欲しいのかい?」
「違うわよ。養殖してる所ってないのかなって思ったんだけど」
「ある訳ないだろう。そんな事する意味がないからね」

 当然であるように答えるリヴァは鼻を鳴らす。人間界では主に養殖した物が流通しているが、魔界では全てが天然物らしい。という事は食材を得るとなると、必然的にモンスターと対峙しなければならない。

「やっぱりウルフが言った通り、狩りをしなきゃお話にならないみたいねぇ」
「その通りだよ。お前達で言う弱肉強食こそが魔界の本意だ。モンスターを狩れる事が大前提で、希少種を狩れる者こそが本当のシェフと呼ばれるんだ」

 低く唸るもこの辺りは切って切れない関係なのだろう。確かに養殖よりも天然物の方が味は勝り、自ら狩る事で食材の利点や習性を習熟する事により、シェフとしての総合的なスキルを上げる。
 リヴァも自身でユニコーンを狩っていた事を思い出す。そんな基本的な所から、魔界と人間界のシェフの差を見せ付けられたような気がした。

「ん〜、要するに自分で釣った魚を料理するって事よね!」
「要約すればね。それより次の獲物は見つけたかい?」
「始めは星一つから探ってみたいけど、やっぱりそうもいかない……よね」

 舞の目はルミアに移動する。だが見ているのは彼女ではなく内に秘めているウルフの方。彼は希少種でなければ納得はいかないだろう。そうなれば必然的に星が六つ以上を求められる。
 難易度は飛躍的に向上し、僅かの実戦経験では役に立たないのは当然の事。ウルフは守ってくれるはずもなく、ルミアはきっと今までと同じ。残す希望はリヴァしかいないが、何とも難しい所だ。

「ね……ねぇ、リヴァイア?」
「自分の身は自分で守りな。気が向いたら助けてやるが、期待するんじゃないよ」

 本当に期待出来ない言葉と表情だ。このモンスター狩りは死活問題へと発展を遂げた事に、舞は嘆息を上げた。
 だがくよくよしていても仕方が無く、進むべき道は既に決まっている。己の興味と向上心は突き進めと言っているのだ。後は行動あるのみ。またそれが彼女らしさと言えよう。
 吟味していては躊躇してしまいがちになるので、適当に開いたページに記載されているモンスターを狩る事にした。それもまた勢いだ。
 開いたページを恐る恐る覗いてみると……見えたのは美しい容姿のマーメイドであった。

「え……こ、これって……」
「へぇ、捕獲ランク五つのグリーディ・マーメイドか。狩る気は充分だね」
「ちょっと待って! こんなのを狩るなんてあたしは嫌よ!?」
「自分で選んだくせに五月蝿い奴だね。確か第六圏のプリザウ地方に棲息するはずだよ」
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