長編小説部屋

□Episode.15
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「ちょ……ちょっと、あたしはまだ授業があるんだから! それに中々来ないって、一晩しか経ってないじゃない!」
「黙れ! 貴様の要望は呑んでやった。次は獲物の捕獲に尽力しろ」
「捕獲って……もしかして、何とかバードは狩れなかったの?」

 まるで逆鱗に触れられたかのように振り返るウルフの眼に、舞の口は横一文字が描かれ、額からは滝のような汗が流れ落ちる。聞いてはならない地雷を踏んでしまったのか、手を離して無言で近づいてくる様に背筋が一瞬にして凍りついてしまった。
 開いた口からどんな罵倒を浴びせられるのかと思いきや、出てきたのは反論ではなく意外な言葉。

「ああ、その通りだ。だからあの獲物を選んだ貴様の悪知恵を拝借しようと思ってな」

 悪知恵の言葉に多少疑問は残るものの、まさか素直に肯定するとは思わず舞は目を丸くして彼を見遣る。熱でもあるのかと額にそっと手を当てると、轟音と共に怒りの込められた黒い炎が召喚された。
 舞を人間界に転移させてから魔界では約四日の時を経ていた。無論その間にルミアと精神交代をしている。リヴァが捕獲するモンスターを説明するも彼女の能力では皆無に等しいのでその間は簡単に捕獲出来るものを狩っていた。
 再びウルフが出てくるも状況が変わらないのが実質。正味で言えば半日程度しか時間を与えられなかったのが実情であるが、それに対しても告げる事はしなかった。言えば言い訳となる事に嫌悪を感じたのだろう。
 手を翳して黒い渦を呼び寄せるが、舞はまだ授業が残っているので必死に抵抗した。先週からの出席日数、知らぬ間に進んでいく授業内容、これ以上は彼女自身も危ういと思うのも当然である。

「本当に待って! もうすぐ次の授業が始まっちゃうのよぉ!」
「ならば貴様が終わるまで俺達はここで待つ事にする。それでもいいんだな?」
「………………。」

 彼が皆の中に紛れ込んだ事を想像すると言葉が出てこなかった。無言は肯定と解釈したウルフはすかさず舞を渦の中に放り込み、続いて二人も飛び込んでいった。
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