†書庫†

□互いの存在*モリ鏡
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貴方は好きと言ってくれた

それだけで十分だと思った

日頃傍にいられなくても

気持ちは繋がってる



そう思ってたはずなのに…


最近わからなくなる
大切なのはどっちなのかと

俺?
それともハニー先輩?

きっと貴方は『大切の意味が違う』というだろうけど…



切なくなる



登校中も
授業中も
部活の時も
下校中でさえも
貴方はハニー先輩と一緒


俺って貴方のなんなんですか?





◇◆◇◆◇◆◇◆


「崇ぃ〜僕、たまちゃん達のところに行ってくるから鏡ちゃんのところにいってきたら?」

いつものように崇の肩に乗る光邦はそう言うとモソモソと自ら床におりた

「…なぜだ」

光邦から鏡夜の元に行ってこいなどと今まで言われたことなんて無かった為、疑問が先に立つ

「ん〜僕が気づいてないとでも思ったぁ?鏡ちゃんなんだか悲しそうな顔してるよ」

(気付いていないと思った…?あぁ…俺達の関係か…)

崇としては特に隠していたわけでもなかったので光邦にバレたからといってそのことに関しては慌てるものではなかった

ただ…

(鏡夜が悲しそう…?)
この指摘は見過ごせない…


「…行ってくる」
「うん☆いってらっしゃ〜い」

ニコニコと笑顔で手を振る光邦

それに反応することなく崇は真っ直ぐに鏡夜の元へと歩いて行った







「鏡夜…」

━ビクッ!?

「あっ…モリ先輩…」

部室では殆ど声をかけてこない崇から呼ばれ、思わず鏡夜の肩が揺れた


「なぜそんな悲しそうな顔をする?」
「えっ…」

驚く鏡夜の頬を崇の指が撫でた

「っ…///」




(そういえば二人きりで話すのなんていつぶりだろうか…

こうして間近でモリ先輩の顔を見るのも…

触れられるのも…)






「っ!?鏡夜…何故泣く?」
「えっ…?」


鏡夜の目からは自分でも気がつかないうちにポロポロと涙が溢れていた

「あっ…すみません。なんでもないんです…」

すぐに自分の失態を隠そうとその場から離れようとする鏡夜

しかし、それは崇によって阻まれてしまった


抱き締められる形で…



「モリ先輩…///」

「鏡夜…何があった?」

心配そうに聞いてくる崇
抱き締める腕は温かい




「……本当になんでもないんです」




モリ先輩は理由を聞こうとするけれど

鏡夜はこれだけで充分だった


モリ先輩が自分のことを気にかけてくれる
心配してくれた
見捨てられてない…


だから本当のことを言わず、もう大丈夫とやんわりとした笑顔を向けた

それに真実を言ったところでモリ先輩を困らせるだけだろうし…



しかし崇は納得しなかった

眉を潜め苦しそうな顔をする


「…俺は力になれないのか?」

今まで見たこともない悲しそうな表情だった


「…っ!?モリ先輩!違う「何が違う?」」

咄嗟に誤解をとこうとした鏡夜に崇は最後まで言わさせなかった

「俺は…光邦に言われて鏡夜の様子がおかしいのに気付いた…。それに泣いた理由もわからない…」

「………」

「俺は…鏡夜のなんなんだ…」



(なっ!?……)
━ブチッ…

崇のこの一言で鏡夜は完全にキレた…



「それは…俺のセリフです!」

突然怒り出した鏡夜
いつものように冷静な彼はここにいなかった…


「貴方は…俺に好きだと言ったけれど貴方の傍にいるのは俺でなくてハニー先輩じゃないですか!?」
「っ…!」
「それでもそれは仕方がないことだと自分に言い聞かせてきましたなのに…」


あぁ…

言葉が止まらない

今まで押し殺してきたものがとめどなく溢れ出す


これ以上はモリ先輩を困らせるだけなのに…




「こんな思いするなら…付き合わないほうがまだよかった」

最後は少し涙声になっていた







「鏡夜…すまない」



そう言って崇は涙ぐむ鏡夜の顔を自分の胸に押し付けるようにしてぎゅっと鏡夜を抱きしめた


「俺の身勝手で鏡夜にこんな思いをさせてしまった。だけどずっと側にいることもできない…」
「……」

「悲しい思いをさせてしまうとわかっている…それでも鏡夜と別れることは絶対にしたくない…」
「モリ先輩…」


「俺は自分がこんな身勝手だとは思わなかった…」


あの…影に徹するようなモリ先輩が矛盾した自らの感情を露わにしている

それほど思われていると

そう…

思っていいんだよな…





鏡夜は手で側にある胸をやんわりと押すと、ゆっくり崇から離れた

「モリ先輩。ありがとうございます。そして我が儘を言ってすみませんでした」

穏やかな笑みを見せてそう告げる鏡夜
しかし崇は何に対して礼を言い、何を詫びているのか掴めずに微妙な表情を浮かべていた


「モリ先輩の気持ちは十分にわかりました。俺もあんなこと言いましたけど、別れるつもりもありません。俺のことを思ってくれているモリ先輩が近くにいる…それだけで十分です」

「鏡夜…」

「さて。そろそろ開店の時間ですね。今日は指名客がたくさんいますので頑張って働いて下さいね」

いつの間にかいつもの冷静な姿に戻っていた鏡夜はそう言うと遊び回っていた部員達の元へと歩いていった




次の日

―カタカタカタカタ…

いつものように紅茶をすすりながらパソコンを操作する鏡夜


しかしいつもの違う点が一つ



向かい側の席には穏やかな表情を浮かべる崇の姿があったのだった…


―fine

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