短編集
□Honey Trap
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「ねぇねぇ 祐希。T大に行かないのー?勿体無いなぁ。」
授業中には決して見せない柔らかい表情。普段はキリッと神経質そうな顔をしていて、
見ようによっては無愛想そのもの。綺麗な顔立ちをしているからかなりキツイ印象も与えてしまう。
そんな女教師の不意打ちの笑顔は思春期真っ盛りの心身にはかなり悪くて……。
「祐希ぃ。ほらココに座って。」
隣の椅子を手で叩きながら俺を呼びつけるその仕草はやたら可愛らしいからまた困る……。
所謂、ギャップ萌えってヤツか?
しかし頭を軽く振り、邪念を振り払う。これはいつもの女教師のトラップ。
騙されてはいけない……。
キッと強く睨み付けたのだが 俺の力じゃこの女教師には何のダメージも負わせる事は出来なかった。
「あー、この前ね、生徒会長クンが『先生と長谷川君は出来てるの?』って迫って来たのよ。」
ケラケラと笑いながら立ち上がると、俺の手を取って引っ張った。
高いヒールを履いてる筈だけど先生の身長は俺の頭1つ分くらい低くて……。
相変わらず小さい。
いや、俺がデカイのか。
「ん〜祐希ぃ。」
ギュッと抱きしめられてドキリと胸がざわつく。
大体教師が生徒を誘惑するよーな事をしていいのか?
スリスリと頬を俺の胸に擦り寄せて、上目遣いに見上げるから胸の谷間が見えてるし……。
絶対にワザとだよな、コレ。
「弥生先生離して下さい。」
気持ちが乱されてるなんて気付かれたくないから敢えて冷静に言葉を放つのだけど俺に構わず先生は微笑む。
「でね、生徒会長クンに『そうよ』って教えてあげたわ。」
なんてことを……。
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