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□◆短編:にょたトキ妄想/北斗四兄弟◆
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控えの間で胴着に着替えていると、ふいに扉が開けられた。
「誰っ!?」
胴着で素肌を隠しつつ、鋭い声と共に振り返る。
「あっ!姉者!す、すまない」
弟のケンシロウだった。
ケンは素早く扉を閉めた。
「いるとは知らなかったんだ…」
扉越しに申し訳なさそうに声をかける。
「大丈夫よ。ちょっとビックリしただけ。」
着替えを終えると扉を開け、赤くなって顔を伏せているケンシロウに
「ふふっ、今日はよろしくね。」と声をかけた。
「あ、あぁ… こちらこそ。」
はにかみ笑いで頭を掻く。
「ケン!てめえそんな所で何をしてやがる? あっ!さては貴様姉者の着替えを覗いてやがったな?」
ジャギがドタバタとやってくる。
「ジャギったら何言ってるの。さ、兄様が待ってるわ。行きましょう。」

三人が道場に入ると、ラオウが腕組みをして待っていた。
「まずはジャギ、お前からだ。」
「おう!姉者、手加減しねぇからな!」
「こちらこそ!」
二人が修練場の中央に向かい合い構える。
「はじめっ!」
ラオウの号令と共にジャギが飛び出す。
ジャギは無数の突きを繰り出すが、トキには擦りもしない。
焦ったジャギが大振りな一撃を繰り出した刹那、トキはそれを受け流し背後を取った。
「それまで! ジャギ、修練が足りぬ! 次!ケンシロウ!」


悔しい表情を見せたまま、ジャギはケンと入れ替わる。
「はじめっ!」
ラオウの声の後、二人は微動だにしない。
「けっ!ケンシロウめ、姉者の気迫に押されて動けないでいやがる。」
そう呟くジャギを他所に、ラオウは二人の間に見えない無数の拳の交錯を見ていた。
どの位睨み合っていたか… 二人が同時に飛び出す。
「そこまでぇっ!」
ラオウが制止をかける。
二人の拳は互いの秘孔を的確に指し、触れる寸前で止められていた。
「…ふむ、いいだろう。ケンシロウ下がれ。次は俺だ。」
ラオウはゆっくりと修練場の中央に歩み、トキと正対した。
ラオウの闘気が激しく吹き上がる。
対してトキの闘気がゆらりと陽炎のように沸き上がる。
ラオウが素早く重い突きを繰り出す。
トキはゆらりとかわしていく。
その動きはさながら優美な舞いのようにすら見える。
「兄者でさえ、姉者に突きを当てられないんだ… 俺の突きが当たる訳がねえ。」
ジャギが呆気に取られて言う。
ラオウが放った一撃をかわし、ふわりと宙に舞う。
空中にいる間もラオウの無数の拳は出され続けるが、風に躍る羽根のようにその全てをかわす。
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