小説

□吉丁八本 3
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「あっ、ココちゃん…!」

ホテルの部屋で待っててくれたのはまーくんだった。

「まーくんだ!久しぶりだねぇ」

まーくんは松本っていう名字だったんだ。予約名だとわからなかった。
でも顔を見たらちゃんと思い出した。このいい人そうな、弱そうな感じの、ひょろっとした、うすい顔の。

まーくんは閉めたドアのすぐ前で俺をぎゅーっと強く抱いた。

「会いたかった…ココちゃん…」

切ない声で言ってくれるから、なんだか恋人に会ったみたいな気がする。
だから俺もなるべく強く抱きしめ返した。

「まーくん」

まーくんに呼んでもらうのは3回目だ。
前は確か1年くらい前。その前はそのまた1年くらい前。

「ココちゃん、俺のこと覚えててくれたの」

まーくんは俺を見下ろして、もともと下がってるまゆげをもっともっと下げて笑った。

「うん」
「嬉しいよ…ねえ、ほんとに会いたかったんだ」
「ありがと。まーくん今なにしてるの?お仕事してるの?」

前は確か、なんかのバイトを辞めさせられたって言ってた。

「うん。今ね、パンの工場で働いてる」
「ええ?!パンの工場?!」

パンの工場って、パンの職人さんしか働けないんだと思ってた。

「すごいねまーくん!パンを作るの?」
「そうだよ」

まーくんは少しほこらしげだ。

「ええ、すごいねすごいね。パン食べほうだい?」
「うん、まあ、賞味期限が今日のやつとか、形が変で売れないやつとかだけど」
「いいなぁ」
「ココちゃんパン好きなの?今度持ってきてあげるよ」
「ほんとう?!ココ、まーくんの作ったのがいいな」

なんだかうれしくなってにこにこ笑っちゃった。
まーくんがまた近いうちに俺を呼んでくれたらいいなぁ。
まーくんは少しさびしそうに笑って、実は今日も時間がないんだ、と言った。

「予約、1時間だもんね」
「そう…ごめんねココちゃん、俺、あんまりお金がなくて…」
「そっか。じゃあ急がなきゃ」
「ココちゃん…」

またぎゅーとされて、今度は脚にちんぽをこすりつけられた。

「ココちゃん、あの…え、エッチなこと、していいんだよね…」

まーくんが俺の仕事を何だと思っているのかはいまだに謎だ。
そういう仕事なのに。

「うん。セックスするけど、シャワー浴びないと。あとうがいとかも」
「う、うん、そうだね、ごめん」
「でも時間ないから一緒にシャワーする?」

そう聞くと、まーくんはすごくうれしそうにしてくれた。



古いホテルで、なかなかシャワーの温度が安定しなくてやきもきした。
まーくんの時間とお金がこんなとこで使われちゃう。

2人で並んでお湯をかけ合って、まーくんのちんぽはもう爆発寸前みたいになっててかわいい。

「まーくん、ここでフェラしてあげよっか」

ひざまづいてまーくんの膝にキスをする。

「あっ、ココちゃん…」

まーくんは真っ赤になった。

「あっん、おっきくなってる…」

ぱくっとくわえる。

「あ、ココちゃん、ダメだ、俺、」

まーくんはすぐにもぞもぞし出した。

「い、イっちゃうよ、今すごい溜まってて、俺、」

え、と思った時にはもう、俺の口の中は精液でいっぱいになっていた。
ごっくんして見上げたら、まーくんが半分目を閉じてはあはあしていた。

ちんぽはみるみるうちにしぼんでいく。

ああ、せっかく呼んでくれたのに、終わってしまった。

「まーくん、ベッドでたくさんお話ししよう?」

シャワーを止めると、まーくんの息づかいだけが聞こえてきた。
急に寒くなって、バスタオルを取って2人でくるまった。





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