小説

□吉丁八本 4
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ああ。ムラムラする。無駄に。
腹が立って立ち上がり、冷蔵庫からビールを取り出してプルトップを勢いよく開けた。

「やー!やだ!おねがっ、ああ!」

こころの悲鳴が聞こえる。
断続的な喘ぎ声が聞こえて、突っ込まれて揺すられ始めたことを伝えて来た。

コウの背中越しに、息荒く腰を振る翔が見える。

「これ何が楽しいんだお前」

呆れてコウに声をかけると、コウが低く唸った。

「楽しいわけねえだろ」

意味不明。
床に放ってあったエロ本を手に取る。素人特集は俺の趣味じゃないから誰かが持ってきたものだ。

こころが泣き声で喚き始めた。

「しょうくん、やめて…うっ、お願い…っ」
「中に…出すよ…」
「やだ、やだよ…」
「こころ…っ」

翔がイきそうだ。
そこにまたコウが声をかける。

「なぁ。中出ししたらクパアして見せて」
「AV監督かよお前は」
「お前あんなエロいの目の前にしてよくエロ本見てられんな」
「俺はお前と違って神経がまともだから」

コウは俺と話しながらこころから目を逸らさない。

大概だ。本当に。阿呆が。

箱に手を伸ばすと煙草が切れていて、更にムカつく。

舌打ちをしながらコウの煙草に手を伸ばしたところで、翔の動きが激しくなった。

「あー、イく、イくっ、出すよ、なかにっ、こころ」
「やだ!やだ!や…あ…」
「っ、」

ビクビクと痙攣し、こころの手首をがっつり押さえつけたまま、翔がイった。

「見せて」

コウがベッドに乗る。
馬鹿なのかあいつは。

「うわ。エロ。なあ、俺もヤっていい?」

翔を体で退かせてコウはこころに笑顔を作る。
ハアハアと息をしているこころは脚を広げてアナルを晒したまま翔を見た。少し不安そうだ。
翔は自分の服を直しながら、こころの好きにしていいよ、と笑った。

好きも何も。
どいつもこいつも。ここにはアホしかいない。

いいじゃん、翔とはヤって俺とはできねえの、とコウがこころの頬に触れる。

普通はそうだろ。アホか。

こころは少し考えてから、お仕事ならいいよ、と小さな声で言った。

コウが「お前高えからなー!まあいいや。後払いで」と言いながらこころに覆い被さり、体を撫で回しながらキスを始めたので、俺は煙草を買いに出るため立ち上がった。
玄関を出ると、上半身裸のまま翔がついてくる。

「煙草すか」
「ああ」
「吸います?」

翔の差し出したラッキーストライクを一本取り火をつける。
翔も吸いながら横を歩いている。

マンションを出てでかい通りを挟んだ向かいにコンビニがあり、車の途切れるのを待った。
深夜なのに暑い。

「お前さー、気持ち悪いな」

一番の阿呆はこいつだ。

「俺すか」

翔は穏やかな声で言う。

まあいい。こいつらの問題だ。俺は関係ない。
これ以上首を突っ込みたくないから、コウには後で、こころとヤるなら今度から自分の家に呼べと言おう。

道路を渡り、くわえタバコのままカウンターで煙草を買う。迷惑そうな男の店員に煙を吹きかけて外に出ると、翔が電話をしていた。

「明日行く。…うん。…じゃね」

短いやり取りに、こころの顔が浮かんだ。



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