小説

□岡崎と森田と素股
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森田さんと喧嘩した。
喧嘩っつーか、まあ、俺が勝手に怒って無言で出てきただけだけど。
このパターン多くねー。
冷えたジョッキにビールを注ぎながら奥歯をギリギリと鳴らしたら、近くにいた平井がビクついた。

「あれはねーよな。まじ。ねーわ」
「あっ、はい…」

なんだかわかんないくせに返事してくる。
だって森田さんが俺の写真に供えるために冷やしといたスポドリを俺が飲んだことになんかムッとした顔して、まじ意味わかんねーんだもん。
なんなんだよ。その写真俺だからな?!本体ここだから!

「くっそが」
「どしたんすか?」

平田と逆に、アホのような顔をして西尾が覗き込んでくる。

まあ。普段だったら苦笑して終わるけど最近また忙しくてこっちもイライラしてたから。
なるべく早く、仲直りしよう。

なんかこういう日に限ってやたら客が多くて、へとへとになって仏頂面で帰った。
すぐ寝ようすぐ寝よう、シャワー明日でいいや、と思ってたのに、森田さんが起きて待ってた。

私は悪いことをしましたごめんなさいと、顔に書いてある。ほんとにかわいい。
自覚はあるんだな。まず俺より俺の写真を崇めすぎだからな。
俺は知ってる。そういうの、ほんまつてんとうって言うんだよ。

「ねえ。謝って」
「ごめんなさい」

素直。

「なんで?なんで謝った?わかってる?」

おっ、俺が、と言ったまま、森田さんはこの世の終わりみたいな絶望的な顔のまま固まってしまった。
これには弱い。

「いいよ。もういい。俺もイライラしててごめん。だけどなんかムラムラしたからセックスして」

ちらっと俺をみて、申し訳なそうな顔で手を伸ばしかけた森田さんの首に手をかけ、強引に唇を奪う。
舌を入れたら森田さんも俺の体に腕を回した。

「明日、仕事だけど、いい?」

キスの合間に息荒く聞くと、同じく息の上がった森田さんは頷いた。

敷いてあった布団に倒れこんで、森田さんが俺の服の裾から手を入れ、脇腹を撫でる。
その手を取って、体勢を入れ替えた。
跨って見下ろす。森田さんはそっと眼鏡を外して頭上に置いた。

裸眼で少し目を細めて俺を見上げている。

「今日、俺にやらせてくれない?」

どういう意味だろうと考える顔を、少しだけ睨む。
森田さんの体を後ろから抱き込むみたいにして、脚を絡めた。
耳に唇を押しつけると、森田さんが身じろぎをする。
ああダメ。今日ほんと、意地悪してしまいそう。

「俺に、やらせて?」

勃起したそれを密着した森田さんのケツにすりすりしてやったら、目に見えて動揺し出した。

あ、あ、って言ってる隙に、部屋着のズボンとパンツを一気に引きおろす。自分のも、森田さんのも。

「っ、あの、」
「痛くしないからね」

とにかく森田さんをちょっとびっくりさせたいのと、ちょっとだけ、ちょっとだけ森田さんを抱いたらどんなだろうっていう好奇心。

タチは何度か経験があるけどどれも相手が望んでそうなっただけだ。タチやりたいって、思ったことなかった。森田さんとセックスするまでは。
もちろん今も抱かれる方が断然いいんだけど。いいんだけど、森田さんが抱かれるのを見てみたいという気持ちがどこかからかすかに湧いてくる。
一回だけ。一回だけだから。
この真面目な元ノンケはどんな顔でどんな反応をするだろう。

そんなことをぐるぐる考えながら、興奮しきった体を森田さんに押しつける。

「好きだよ」

言いながら森田さんの上半身に手を滑らせる。
乳首に触ると少しだけ反応があった。体硬くしてるくせに息は少し荒い。
興奮してる?

首筋や肩に噛みつくみたいにしてキスして、歯形やキスマークががっつり残ればいいなとどんどん凶悪な気持ちが湧き上がってきた。

下半身が温かい。森田さんのケツが俺の先走りで汚れてきてるかなとか思ったらもうやばい。

「…岡崎さん…」

首を甘噛みしながら薄目で見ると、森田さんは目を閉じてはあはあと息をしていた。
こんなの、お願いだから抱いてくださいって言われてるようなもんじゃない?知らないけど。
だめだ。優しくできる気がしない。俺はタチだとそういう属性だったのか?
それとも、興奮しすぎてガマンができないだけか。








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