小説

□43 なつめと夏の終わり
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しっかり臨戦態勢になったペニスを根元からゆっくり撫でると、なつめは切なそうに息を吐いた。
先端から透明の液体がとろっと垂れたのでそれを舌先ですくい上げる。

「んんっ」

なつめは身体をびくつかせて声を漏らした。そして俺の頬に手を伸ばしてきたので、思わず指をぱくりと咥え、歯を立てた。

「ああ、っ、創樹くん……」

そのまま、勃起したものを放置して、人差し指に舌を這わせる。ちゅぷ、と音を立ててしゃぶり、奥まで咥え込んで、ひくひくと動く指先を喉の奥へ飲み込む。

「待って、なんか……っ、なんかこれ、やばいかも」

ちらりと見上げるとなつめは細めた目でこちらを見下ろしていた。なつめの分際で。
本体は完全に勃起したまま放置されている。

人差し指と中指。2本。なつめの指は、太くはないけど普通に男の手だ。
そして、ふと思う。これが自分の中に入って、中を、腹が立つくらい、中を。
何を考えているのか、と我に返って、指の第二関節の当たりをつぷ、と噛んだ。

「っ、創樹くん……噛むの、好き?」

笑いを含んだ声が聞こえて、頭を優しく撫でられる。腹が立ったので、薬指も増やしてじゅーっと吸ってやった。

「なんか……このまま、指だけしゃぶられて、イっちゃったらどうしよう」
「さすがにお前でも、それは無理じゃね」
「でも創樹くんがしてくれるの見てたら、なんか、すっごい気持ちいい」

変態が。

「本体しゃぶってほしいか」
「本体ってなに?」
「おめーの本体はちんこだろ」
「僕の本体は僕だよ!」
「ガタガタうるせえ。ちんこしゃぶってほしいかって聞いてんだよ」
「……うん」
「ぶち殺す」
「なんで?!」

口の中とはいえ粘膜をなつめの指で触れられることに少し耐えられなくなって、でもこんな汚い場所でヤるのは絶対に嫌だから。仕方なく、仕方なく、仕方なく。放置したのになぜかガマン汁を垂らすそっちへ、舌をのばした。

「あ、っ創樹くん……」
「ん……」

軽く歯を立てる。

「い、」

なつめの体が強ばる。多分少し痛いんだろう。
ほんとうはもっとがぶっと噛みたい。その欲に素直になって、ペニスから口を離して腿に噛みついた。

「いた……」

柔らかい声。また、頭を撫でられる。ペニスはびんびんのままだ。噛んだあとに歯型がついた。そこをぺろぺろと舐める。

「あっ、だめ、待って……創樹くんっ気持ちいい……」

腿から舌を這わせ、ペニスを再度口に含む。

「はぁ、は、創樹くん、」

カリを舌先で刺激して、先端に唇を押し付けるようにしながら、手で根元から扱いたら、なつめが体を少しひねって耐えている。

「……出ちゃいそう、創樹くん……」
「飲ませて」
「は?」
「出せよ。飲んでやる」

ぜんぶ、と言い足して、上目遣いで見上げる。

「っ、だめ、ほんとに出る、出すよ……出る……っ」

イく寸前から、射精の瞬間、そこから3秒間。
なつめは完全に男の顔をした。言葉にならないような複雑な気持ちが押し寄せて渦巻き、ほとんど無意識に、なつめの精液を全部飲み干した。

はあ、はあ、と息を荒くしながら、なつめは素早く身支度を整えて、俺の体をやわやわと抱き寄せた。もう、男くさいにおいはすっかり消え失せている。

「ごめんね……飲ませて」
「帰るぞ。酒奢れ」
「そうだね」

個室の鍵に手をかけたところで、トイレの中へ人が入ってくる気配があった。なつめが俺の体をまた抱き寄せる。至近距離にあったなつめの唇に、俺は深く深くキスをした。首に抱きついて、多少「ちゅ」と音が出たけれど、気にもかけずに。
なつめはただ従って、それを静かに受けている。

蒸し暑い。人も多い。公衆トイレなんて、長居したいわけがない。
早く帰ればいいものを。

人の気配が去ったところで、なつめの小さな声が聞こえた。

「もう少しだけ」

もう一度唇を合わせたところへ、遠くの方で、花火の上がる音がした。




-end-
2019.9.8



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