小説
□5 宅飲み
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「あっくんてさぁ、お酒飲んだらどうなる?」
「別に変わらねぇよ」
「エロくなったり」
「しない」
「甘えんぼさんに」
「ならない」
「急にシたく」
「なんねぇよボケが」
「あーっでも本当楽しみー!ねぇお菓子何買おうね?うふふ」
俺が1人暮らししているアパートの近くには小さなスーパーがあり、俺と広樹は創樹となつめをその店内で待っている。
宅飲みの買い出しも兼ねて。
「あ、なっつからメール…もうすぐ着きますだって」
「酒どのくらい飲むかな」
「わかんないね…とりあえず俺と創樹は500の6缶パック2つずつあれば足りるかな?ビールは」
「ケース買いだな。あと焼酎とか?お前ら強えんだな」
「うん!あああ、楽しみすぎて漏らしそうだ!」
「根元縛ってやろうか?」
「やん…あっくんのいじわるぅ…」
どMって冗談が通じなくて怖い。何を言ってもすぐ目が潤む。
カートにビールのケースと焼酎とジュースを次々に乗せていく。
「あ!なっつ!創樹!こっち!」
「ああ、ごめんね遅れて」
「彰人まじ今日こそ隙見て俺とヤって」
「創樹!隙って何の!」
「創樹くん!」
「双子揃って死ね」
「え?あっくん俺も?なんで?」
「俺の顔をよく見ろよ彰人、ほら、広樹とたいして変わんねぇだろ?大丈夫大丈夫絶対ヤれるって」
「創樹くんお願いだからやめて…ほら、おつまみ選ぼう?ね?創樹くんの好きなじゃがりこんがあるよほら買おうね」
「チーズとサラダと、あ、限定のも買う」
「なつめさすがだな、保育士みてぇ」
「誰がガキだ。でもその設定もらった。なつめ、今度保育士に」
「わかった!わかったからそれ以上言わないで!」
「創樹、設定って何?」
「広樹、2人にもきっといろいろあんだよ、そっとしといてやれ」
「彰人も試す?ショタプレイ」
「いらね」
つまみも適当に買い込んで店を出た。
ビールのケースを抱えた俺に広樹がしがみついてきて、一瞬殺意が湧く。
「んふ、あっくんまじ力持ち」
「重いし暑いから消え去れ」
「なんかもう少しで傷つきそう」
「たまには傷つけよ」
古くも新しくもないアパートの1階。
決して広くはない部屋の、大きくない冷蔵庫に詰められるだけ酒を詰めてから、各々好きなものに手を伸ばす。
「彰人くんち、綺麗だね」
「すげぇストイックに掃除しそうだもんな」
「でもあっくんてね、俺がポテチこぼしても怒らないんだよ?」
「お前はこぼさずにものを食べられないかわいそうなやつだから諦めてるだけだ」
「もう、あっくん優しい」
「なつめは缶チューハイ?」
「うん、お酒強くないから…」
「俺もなつめと飲むの初めてだもんな」
「そだね」
「お前酔うとどうなんの?」
「あんまり変わらないと思うよ」
「エロくなったり」
「しないよ」
「ヤりたくなったり」
「しないって!」
「…やっぱ双子だな、発想が同じ」
「なっつが一番変わらなそうだね」
「広樹ちょっとじゃがりこん取って」
「そういえばこないだの経済学史でさぁ」
くだらない話をしながら、酒が進んでいった。
*
なんか、あっくんの様子が少し変だ。
さっきからチラチラ、横にいる俺を見てる。落ち着かない感じ。どうしたんだろ、珍しいな、しかしまったくイケメンすぎるなあっくんは!
「あっくん、ちょっと酔ったんじゃない?大丈夫?お水飲む?」
「…いらない…」
「本当だ、彰人くん、顔も赤いしぼーっとしてる?少し寝たら?」
「彰人、寝込み襲っていい?」
「もうダメだ……広樹に触りたい」
「は?」
3人の声が重なる。
あっくんちょっとそんな熱い目で見られたら俺簡単に勃つんだけど。
「広樹、いい?」
「う?うん、触る?どこに?」
「どこでも」
「えっと…手繋ぐ?」
「繋ぐ」
おずおずと差し出した手をあっくんが両手で包んで、俺を見て微笑んだ。