小説

□友達…だよね?
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「うっそ!こないだまでお前ら彼女いたじゃん!」
「別れた」
「俺も」
「まじで?なんだよー、じゃあ今みんなフリーかぁ」
「合コンやろうぜ」
「うーん、なんかしばらく女いいかも」
「ははは、そんな痛い別れ方したの?」
「ほっとけよ」

金曜日。駅に近く、全席半個室になっている居酒屋は混雑していて、俺たちの騒ぎ声も掻き消されていく。

俺たち4人は高校の同級生で、卒業後の進路は皆バラバラだったのに付き合いは続いている。
何ヵ月かに一度、こうやって集まって飲んだり、夏だったら海に行ったりしている。

「でも相内いっつもすぐ彼女できるからなー」
「いや、今回は本当ちょっと疲れたわ」

相内は理学系の大学生。多分俺たちの中で1番モテる。縁なし眼鏡、細身の体型、色白の肌。いかにも理系の風貌だ。

「えーもったいねぇ、お前モテんのに」
「相内ってなんでモテんの?」

俺は単純な疑問を口にした。

「あんまり笑わない感じとか無口っぽくて愛想ない感じがいいらしいよ」
「それ俺褒められてないんだけど」

柿崎の言葉に相内が苦笑する。

柿崎はおしゃべりで明るい。物凄いイケメンなわけではないが、盛り上げ上手なところが合コンでもウける。

「眼鏡もいいのかな。ただ目悪いだけなのにズルいよな」

呟いた俺に柿崎の憐れみの目が向けられる。

「並木は?次候補いないの?」
「いない。俺モテねぇし」
「なんだよ!卑屈んなって。よしよし、傷ついたのか?」

柿崎がふざけて別れたばかりの俺を抱き締めた。

「柿崎ー!もう俺自信ねぇー!」
「大丈夫大丈夫、並木は優しくて素直でよく笑うし安心感あるって、俺の元カノが言ってたよ?」
「ほんと?俺大丈夫?」
「はは、固定の彼女作るからそんなことになるんだろ。一回さらっと遊べば?」
「出たよ、最低発言」

俺と柿崎は野村に軽蔑の目を向ける。

野村ははっきり言って軽い。固定の彼女を作らずに、いつも違う女の子と遊んでいる。見た目がチャラくないところがズルいと俺は思っている。適度にお洒落で女の子の扱い方がうまくて、口癖は「真剣になったら負け」だ。

みんなそれなりにモテるのだ。俺だって全然モテないわけではないけど、でもみんなよりモテない…そう…俺はダメだ…だって…

「ちょっとさ、相談していい?マジな話」

俺が真剣な顔で言うと、3人とも笑いを引っ込めて耳を傾けてくれる。

「もう俺…女の子とエッチできないかも」
「なんで?なんか言われたのか?」

柿崎が横から顔を覗き込んでくる。

「…『体の相性かもしんないけど並木くんのエッチあんまり気持ちよくなかった』って、別れ際に…」

誰かが息を飲むのが聞こえた。

「今日、おごるわ」
「俺明日女の子紹介してあげる」

柿崎と野村がテーブル越しに手を握ってくる。

「ね、酷いよね?俺悪くないよね?悪い?やっぱダメ?そんな下手なのかな?わかんねぇよ自分じゃさー!」
「並木、辛かったな!」
「それは人数経験するしかねぇわ!」
「それは嫌」

相内は何も言わないけど、さりげなく俺のお酒を注文してくれた。

やっぱり話してよかった。みんなが怒ったり笑ったりしてくれて、もやもやが少しずつ晴れていく。

「でも俺ほんと、次彼女できてもさ、勃つかなぁ…」
「大丈夫だって!考えすぎが1番よくねぇよ!」
「一緒に風俗行こうぜ」
「それも嫌」

柿崎と野村が励ましてくれて、相内が話を聞いてくれるうちに、どんどん酒が進んでしまった。



「おれやっぱらめー、自信ないもん。もうエッチれきないれー、死ぬのー」
「並木大丈夫か?呂律怪しいぞ」
「いいんらー、もうおれ1人れ生きるんら」
「ら、じゃねぇよ」
「よしわかった!」

野村がテーブルをぽん、と叩いた。

「相内!お前黙ってないで揉んでやれ」
「は?」

相内が無表情で野村を見る。俺も柿崎も意味がわからず2人を交互に見た。

「だから、ちょっと手伸ばして並木の揉んでやれよ。ちゃんと勃つか」
「俺が?並木のを?なんで?」
「ぶっ」

相内があまりにもとぼけた顔をしているので、俺は吹き出してしまった。

「あはは、あいうちウケるー。いいよーもう」
「お前のために言ってんだぞ?」
「ありがとーのむらー、おまえやさしーなー」
「柿崎!お前でもいいから揉め!」


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