小説

□友達…だよね?
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「はぁ?野村も酔ってんの?」
「違うって。こういうのは実践が全てなんだよ。いくら励ましたって勃たなかったら意味ねぇんだから」
「えーやら、おれたたないのやら」
「だろ?わかった。俺が揉む。」

なんだかわからないうちに、俺は野村に股間を揉まれていた。

「ちょ、あは、のむらーくすぐったいからー」
「大丈夫大丈夫」
「野村、男ともヤったことあんの?」
「ねぇわ!ただ並木が気の毒すぎてさぁ」

言いながらも野村の手は止まらなくて、ちょっとなんか変な気持ちになりそうでヤバい。

「ちょ、っとまっても、う、いい、いいっのむら」
「あ、勃ってきた」
「まじで?よかったなぁ並木!」

野村は手を離した。ちょっと息が荒くなってしまったのが恥ずかしくてテーブルに頬を付けたら、視線の先にいた相内と目が合った。

「あいうちー、みるなよーはずかしいらろー」
「相内も揉んでやれば?」

柿崎の笑いを含んだ声が聞こえて、相内が柿崎の方を向いた。

「え」
「野村と並木見てて興奮したんじゃねぇの?」
「そんなわけねぇだろ」

相内は相変わらず無表情だ。

テーブルの冷たさが酔った頬を冷やして気持ちがよかった。だんだん眠くなってくる。

「あいうちはー…おんなのこにーモテていいなー…」
「並木?大丈夫か?」
「あいうちはーえっちうまいのー…?」

俺の意識はそこで途絶えた。



 *



気付いたら、俺は店から1人暮らしをしている家までの道を、相内に支えられ、水を飲ませてもらいながら歩いていた。

「あれ、のむらとかきざきはー?」
「何回目だよ、もう2時だからってさっき解散したろ?」
「そうだっけ?」

外気と水のおかげか、いくらか意識がはっきりしてくる。

「あー。ごめん。なんか今日すげぇ迷惑かけた?」
「いや。別に」
「でも聞いてもらってよかった!ありがとな」
「うん」

2人で夜道を歩く。相内の家も同じ方向だ。月が見える。気持ちが良かった。

「相内は?なんで別れたの?」

ぽつりと聞くと、相内はため息をついた。

「さあ。女ってわかんないな」
「だよなー!本当にわけわかんねぇよ」


俺がまた愚痴ってしまい、相内が聞き役に回ってくれる。散々言ってしまってから情けなくなった。

「あーごめん、また愚痴った」
「うん」
「なんかしゃべったら腹減ったなー。ラーメン食いたくね?」

確かに小腹は減っていた。でもそれよりも、今1人になったら色々考えて落ち込む気がしたのだ。

「うち寄ってかない?インスタントだけど、いろいろ迷惑かけたからさ、作るよ」
「うん。じゃあ」

アパートに着き、鍵を開けて相内を中に通す。

ローテーブルで相内を待たせて、インスタントの正油ラーメンを2つ作って運んだ。冷蔵庫に1個だけ残っていた卵を相内のラーメンに入れてかきたまにしてやった。

「はい、どうぞ」
「いただきます」

2人とも無言で一口目をすする。
ふと相内を見ると、眼鏡が湯気で曇っていた。

「っはは、眼鏡」
「うん」

相内は箸を置き、眼鏡を外した。
切れ長の目が現れて、見慣れない裸眼が妙に艶めいて見えた。

「…何?」

俺の視線に気付いて、眼鏡をかけ直しながら相内が聞く。

「あ、いや…でも、」
「ん?」
「お前みたいなかっこよくていいヤツが別れるんだから、俺はフラれて当然か、と思って」

相内は少し首を傾げた。

「並木、今日やっぱり卑屈」
「仕方ないだろー。別れたばっかだし、嫌なこと、…言われたし」

相内は眉を潜める。

「気にしすぎるな。柿崎も言ってただろ──」
「なぁ」

俺はきっとまだ少し酔っている。

「相内も、俺のが勃つか試してくれる?」
「え」

相内の顔からは感情が読めなかった。
引いたかな。引くよな。
俺は我に返って焦った。

「冗談だって!さっきの野村のもまじビビったわー」

笑いながら箸の先をどんぶりに突っ込む。
でも相内は笑わなかった。箸を持つことなく、無表情のまま答えた。

「俺はいいよ」
「は?」
「触っても」

相内が少し近づく。俺はその分後ずさった。

「あ、相内?」
「まずは、キス?」

俺はその唇をガン見してしまう。色が白いからか、赤く色づいて見えた。
キス?俺と相内が?


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