小説

□いつも、お側に。
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経営会議兼夕食会が終わり、幹部の方たちがお帰りになる。

僕はご主人さまと一緒にお見送りをして、ケータリングスタッフの人たちと後片付けをしてから、自室に戻られたご主人さまのご用を聞きに行った。

ノックをすると、はい、と返事が聞こえたので、僕はドアを開けた。

明るすぎない間接照明に照らされた広い部屋。その中央に据えられた大きなくの字型のアイボリーのソファで、僕のご主人さまはくつろいでいた。かなりお疲れのご様子。会議の後はいつもそうだった。

「お疲れ様でした。何かお飲み物をお作りしますか」
「いや。…ううん、やっぱりもらおうかな。何か薄めのお酒」
「はい」

ご主人さまは、29歳の若さで会社を経営されている。僕は2年前の15歳の頃にご主人さまに拾われ、住み込みで働く給仕係兼お世話係兼雑用係兼…とにかくご主人さまの望むことは何でもする。
何でも。

今日みたいにたくさんの人が集まるときは、ホテルに料理のケータリングとスタッフの派遣をお願いするけれど、ご主人さまは基本的に自分のことは自分でするし、普段は僕だけで十分事足りる。だから、豪奢な一戸建てに、ご主人さまと僕だけで暮らしている。

部屋の隅にあるミニバーカウンターで、冷蔵庫で冷やされていたスパークリングワインを薄いグラスに注ぐ。シャンパンのような色をしたそれは、微かに発泡してシャワシャワと音をたてている。

「どうぞ」
「ありがとう」

ガラスのローテーブルにグラスを置くと、ご主人さまがこちらを見て微笑む。

「ハルも疲れただろ。今日はもういいよ」
「はい。では、おやすみなさい」

キッチンで軽く朝食の下準備をしようと踵を返しかけたその時。

「ハル」

ご主人さまが僕の腕を取って引き寄せた。僕はバランスを崩してご主人さまの隣にストンと座ってしまった。
ご主人さまは手を伸ばしてグラスを取り、中身を一気に飲み干した。

「ハル…」

ご主人さまが僕の肩を抱いて耳元で囁く。僕の体はその声だけで熱くなってしまう。
ほのかにスパークリングワインの香りが漂った。

「ご主人さま…」
「疲れたよ……ハル、癒して?」
「…はい」

僕はゆっくりと立ち上がった。



 *



黒のジャケット、ネクタイ、グレーのワイシャツ。
僕はゆっくりそれらを脱ぎながらテーブルの脇に落としていく。
ご主人さまはそんな僕をただじっと見ている。僕はその視線を感じるだけで嬉しくて顔が熱くなった。

僕が身に付けているものは全て、ご主人さまが選んで買って下さったものだ。全てがご主人さまの趣味。
なるべくゆっくり脱いで、というのが初めてこれをした時からのご命令だ。

ベルトを外して黒いスラックスを脱ぐ。下着だけになった所で、ご主人さまが言う。

「テーブルに仰向けになってから下着を脱いで」
「はい」

空になったグラスを片付けようとしたら、ご主人さまがそれを取ってよけてくれる。ご主人さまと向かい合うように立って、冷たいガラスの上に座り、ゆっくり背中を預けていく。
僕がここに来てから特注で作らせた、強化ガラスのテーブル。

はあ、と息を吐くと、ご主人さまが聞く。

「冷たい?」
「はい」
「脱いで」
「はい」

僕は少し腰を浮かせて下着に手をかけ、下へずらして足をくぐらせ、それを脱いで床へ落とした。

「かわいい、勃ってるね」

ご主人さまは微笑を浮かべて僕に言う。僕の中心は確かにもう勃ち上がって蜜まで溢していた。僕はご主人さまの視線に、いつもそれだけでイけそうなほど感じてしまう。

「たくさん出てる…指ですくって舐めて。どんな味がするか、教えて」

僕はそこへ手をやり、溢れる自分の先走りを指に絡めて、ご主人さまに見えるように舌を出して舐め取った。



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