小説
□ほんとはもっと甘えたい
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「1週間、いい子にしてたか?」
「は?何だよいい子って」
「ご褒美にキスしてやろうかと思って」
「いらねえよ」
「歩」
浩介は横になったまま腕を伸ばして俺を抱きしめる。
「キスさせろ」
「い、やだよ、何でそんなこと」
「俺は1週間いい子で仕事がんばったから、お前がご褒美くれよ」
低い声が吐息混じりに言う。俺は本当にこれに弱くて、身動きがとれなくなる。
「な。歩」
ゆっくり重ねられる唇はいつも優しい。
大きな手が頭を撫でる。俺はいつもキスだけで、しかもまだ舌も絡めないうちに、腰が揺れそうになって困る。もう勃ったし。
衣擦れと2人の呼吸がやけに耳について、顔が熱くなった。
浩介が腕の力だけで俺を自分の上に乗せた。浩介に跨がるみたいな体勢が恥ずかしくて唇を離そうとしたら、片手で頭を押さえられて、ゆっくり舌を入れられた。
「…ん……」
深くなっていくキスに意識を持っていかれそうで、でも集中しきれない。勃った俺のものが浩介に当たりそうだからだ。
バレる。バレたらまたからかわれる。キスだけで勃ったのか、とかなんとか言われて虐められるんだ…
だから太ももに力を入れて少しだけ腰を浮かしていたのに、浩介は背中を撫でていた手を腰に回してぎゅっと抱きしめてきた。
「んっ」
硬くなったそこが浩介の下腹に擦れる。そんな刺激にも体がピク、と反応した。
途端に視界が反転して、組み伏せられたことに気づく。ソファの布地が擦れる音がした。
「勃ってんな」
「う、うるせ、」
上擦った声で言い返し終わる前に再度唇を塞がれた。
キスがだんだん熱を帯びてきた。俺の足の間についた浩介の膝が、少し上に上がって俺のものに僅かに触れて、思わず擦り付けそうになるのを寸前で堪える。
その分呼吸が苦しいほど荒くなった。
「ん、ぅんっはふ、んっ、ぁ」
「……興奮してんのか」
耳元に響く声に混じる吐息も荒くなっていて、それにさえ感じてしまう。
「うる、せ……もう、…や…」
形だけ抵抗すると、浩介が俺の両手を捕らえた。
こういう時の浩介の手は優しくて、絶対に乱暴なことはしない。普段の意地悪が、セックスの時は鳴りを潜める。無理矢理されたことも嫌なことを強要されたことも、ましてや痛みを与えられたことなど、一度もなかった。
緩く掴んだ俺の手首をあやすように揺らして、浩介は俺の額にキスを落とした。
「いい子だな」
どうしていつもみたいに冷たくしないんだ。
そんな優しい目して。
ちゅ、と音をたてて首に吸い付く浩介は、やっぱりたばこのにおいがした。
「や!やめろ、もうっ」
今やめられたら気が狂うかもしれない。なのに俺は絶対に欲しいと言ってやらない。
俺はかわいくもないしいい子でもないから。
「ああっ……う…」
浩介の手が、制服のスラックスの上から俺のものを撫でる。それは本当に撫でるという手つきで、俺はすぐに物足りなくなってしまった。
「…や……あっ…」
「腰上げろ」
「やだ、も、う…」
「制服汚れるぞ、…ほら、脱がしてやるから」
「っ、ん…」
非協力的な俺の腰を持ち上げて、浩介が俺の制服を脱がしていく。
だだっ子みたいで恥ずかしくて、でも言うことは聞きたくない。浩介から目を逸らしたまま、浩介の動きひとつひとつに神経が研がれるような気がした。
脱がしたスラックスとワイシャツをそっと床に落として、浩介がゆっくり俺の肌に触れる。
「ばかっ、脇腹、だめ…」
「どうして?」
浩介はその脇腹にキスをした。
「やめっ、あっ、浩介!」
何度かキスをしてから、熱い舌がそこを這った。
「やだ、もう、…やだ…」
浩介の頭を手で押し返すと、顔を起こした浩介と目が合う。
「そうか」
浩介の唇が離れる。
安心したような、物足りないような気持ちでいたら、いきなり乳首を吸われた。
「ああっん!や、やぁっ!」
ちゅぷ、ちゅぷ、と繰り返して吸われ、やっと与えられた強い快感に我慢の限界を迎えて、腰ががくっと揺れた。
その腰に、浩介のものが押し付けられる。硬くてこっちが恥ずかしくなる。
「っ、浩介だって…勃ってるじゃん…」
「当たり前だろ」
浩介のキスが俺の唇に戻ってきて、激しく舌を絡める。
「お前で勃たなくなったら終わりだ」
赤くなる俺のパンツをずり下げて、浩介が俺のを握った。