小説2

□佐々木くんの日記
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○月○日
高校生になった。
今日から日記を書こうと思う。

担任の先生は大人しそうなおばさんの先生だった。
クラスに、同じ中学の人は誰もいなかった。ちょっと寂しい。

クラス委員を立候補で決めようとしたけど誰も手を挙げなかったから先生が困っていた。
いたたまれなくなって手を挙げた。
中学の時もやったことがあるしなんとかなるだろう。

前の席の斉木(さいき)くんと少し話した。話しやすい。





○月○日
隣の席の東藤(とうどう)くんが授業中に消しゴムを落としたので拾ってあげたら、真っ赤な顔でお礼を言われた。

彼は授業中も当てられただけで真っ赤になるし、多分赤面症だ。
休み時間に他の人と話すのを聞く限りではそんなに内気なタイプだとは思えないのに、赤面症って意外だ。

斉木くんは小学校から野球をしていたらしくて、部活は当然野球部に入るらしい。

僕はまだ迷っている。体育系ならまたバドミントンがいいけど、本当は手芸部に入りたい。
でもちょっと勇気が出ない。
絶対女子ばっかりだし。
中学の時もそれで諦めた。

高校生にもなって人の目を気にしてやりたいこともできないようではだめだと思うけど。
どうしよう。





○月○日
昨日はすぐ寝たから日記が書けなかった。

今日はものすごい雨。制服がべちゃべちゃになった。

初めての家庭科の授業があった。ランチマットを作るらしい。楽しみ!

今日はまず、藍染で入れるデザインを考えた。
男子はみんなつまらなそうでふざけていた。

僕は大体イメージができたので、先生と話をしたら、それを聞いていた東藤くんが、すごいねと褒めてくれた。
お礼を言ったらまた真っ赤になっていた。
誰と話す時もそうなんだとしたらちょっと大変そうだ。

斉木くんは、漢字で「女体」って入れられますかと先生に聞いて怒られていた。
みんな笑っていた。
彼がいると教室が明るい。





○月○日
今日は身体測定があった。
身長173。
多分去年の春から5cmくらい伸びた。
もう伸びないかもしれない。

東藤くんも伸びたって激しく喜んでたからよかったねって言ったらまた真っ赤になっていた。
3cm伸びて167になったと教えてくれた。
本当にすごく喜んでいたから、身長がコンプレックスなのかもしれない。

うちのクラスはみんなクラス委員に協力的で楽だ。





○月○日
さゆに彼氏ができたらしい。

母さんが興奮している。

なんかイケメンらしくて2人でぎゃあぎゃあ言っていた。

夕飯の時、さゆに、お兄ちゃんにも早く彼氏ができればいいねと言われた。
意味がわからない。

さゆはたまにこういうことを言う。

さゆのフィルターを通して僕を見ないでほしい。

僕は彼氏より彼女がほしいし、彼女より手芸部に入りたい。






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