小説2

□親睦の旅〜4人のそれからこれから〜
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いつもの居酒屋に、いつも通りに集まる。
それがなんだか妙に照れ臭い。

「俺は相内の隣ね」

並木が言って俺の隣に座った。向かいに座った野村の顔が引きつる。

「並木、頼むから一回死んでくれよ」
「は?なんで?」

柿崎は黙って野村と並木のやり取りを見てニヤニヤしている。

「お前、俺の言ったこと覚えてねえの」
「言ったこと?いつ?一回ヤったくらいで彼女ヅラしてんじゃねえよ、のあの子の時の?」
「ちげぇし!何だよ何でそれが出てくるんだよ!」
「あの時は聞いてるこっちも焦ったよな、ゴムつけたのに妊娠したとか。女の子の嘘だったけど」
「黙れ」

野村と並木は、なんだか最近仲が良くなったような気がする。

「ノロケんなって言ったよな?」
「うん、覚えてる」
「今のはノロケと判定されておかしくないだろ」
「ノロケ?俺が?いつ?」

並木はこういう時本当に質が悪い。

「まあまあ野村、並木にそんなこと言ったって無駄だって。並木は多分生まれた時から今日まで勘の鈍さが成長してないんだから」

柿崎が取りなす。
今回のことで、俺も並木も柿崎のおおらかさにとても助けられた。

「仲直りの旅行に行こうぜ」

並木が唐突に言って、野村はとても嫌そうな顔をした。

「とりあえずビール頼むか」

俺が言うと、並木が店員を呼ぶボタンを押す。

「旅行って、どこに?」

柿崎がメニューを広げてみんなに見えるように置いた。
来た店員がかわいい女の子だったので、野村が間髪入れずにビール4つね、と言って優しげに微笑んだ。

「どこでも。近場の安いホテルで一泊とかよくない?あーでも温泉がいいな。相内の浴衣っいってぇっ!」

野村がテーブルの下で並木を蹴ったらしい。

「相内、なんか最近野村が怖い」

並木が子犬のような目で俺を見る。

「仕方ない。全面的に並木が悪い」
「はっ!何でだよ!相内まで…もう倦怠期か…」

呆れて並木を見つめていたら、柿崎が吹き出した。

「並木。相内は俺らの前だから照れてんじゃね。後で2人になったらかわいがってやれよ」
「そうなのか!もう…やべぇな相内ったら全く…」

頭を撫でようと伸びてきたデレ顔の並木の手を払いのけ、柿崎に非難の目を向けると、野村に殴られていた。

「柿崎は余計なこと言い過ぎなんだよ」
「だって考えてみろよ。おもしろいじゃん」
「は。この2人の関係?どこが」
「お前、それは多分嫉妬だよ」

俺と並木は2人の会話を見守る。

「お前は自分が尊敬してた相内という男を並木に取られてイラついてんじゃねえの」
「何?」
「だってもうそろそろ受け入れてもいいじゃん。仕方ないだろ、両想いなんだから。なぁ?」

柿崎は俺たちに頷きかけた。

「そうなのよ、野村悪いね、すてきな相内は俺のものになってしまったよ」
「バカ並木ほんと死ね」
「な、野村、そんなわけで旅行に行こうぜ」
「ふん。2人で行けば」
「えー。それはまた今度にするよ。就活本格的になるじゃん。そしたらなかなか4人で動けなくなるかもだろ、だから行こう、思い出増やそう!」

並木のこのテンションは何なのだ。

「就職、どこで考えてる?」

運ばれてきたビールで軽く乾杯しながら柿崎がみんなに聞く。

「俺はなるべく地元がいいな」

並木が言う。

「俺は東京行きたい」

野村の言葉に、一瞬みんなの視線が彼に集まった。

「日本人に生まれた以上、一回東京に出てみたくね?」
「わからんでもないけど。相内は?」

柿崎に聞かれる。

「やりたい仕事がある程度決まってるから、決まった会社によるな。場所にこだわりはあんまりない。柿崎は?」
「俺もそうかな。運命に従うまでだね」
「うう」

呻き声が聞こえて横を見ると、並木が目をつぶっている。

「おいどうしたバカ」

野村が聞くと、並木は目を開けて笑顔になった。

「な、やっぱり絶対旅行に行くべきじゃね?仲良し4人組で」

俺は並木のこういうところが。

「うん。いいかもな。行く機会も少なくなるしな」
「いいよ」
「仕方ねえな。付き合ってやる」

みんなが返事をして、決まった。

「うぉし!じゃあ俺が予約とかしとくから、野村が車出せよな」
「並木は乗せない」
「なんでだ!」

こういうところが、俺は、昔から。










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