小説2

□親睦の旅〜4人のそれからこれから〜
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「うほー!畳だ畳だ!」
「まず風呂行く?」
「温泉まんじゅう食おう」
「夜メシってレストラン?バイキング?」
「部屋食だって」
「さっき説明されただろ」
「聞いとけよ、つか予約したの並木だろうが」

並木のボケは、温泉に来ても治らない。

「相内、浴衣に着替えるの手伝う?」
「いい」
「帯でくるくるしてあげるから」
「いいからほら、並木も早く着替えろ。温泉行くぞ」

壁際に追い詰められたので避けるように横に逃げる。

「並木。浴衣よりさ、風呂の方がおいしいんじゃね?浴衣はあとでいくらでも見られるよ」
「……柿崎、お前いいやつだな」
「あーあーあー聞こえない聞こえないバカの声聞こえない……相内お前あのバカのどこがいいんだよ」

ニヤニヤしている柿崎の肩を抱く並木と、不機嫌そうな顔で俺を睨む野村。

この4人で頻繁に会うことも、卒業したらなくなるかな、と少し寂しい気もした。





「なんで隠すの、なあ相内、タオルいらなくね?いっつも見てるじゃん!待って、待てって相内!」

体を洗い終えて、並木の追跡をまく。

大浴場はかなり広く、しかも湯気で曇っていて、少し離れるともう誰がどこにいるかわからなかった。
しかも俺は眼鏡を外している。
さっき、その顔を見た並木が、眼鏡無し相内もかわいいと言って野村に首を絞められていた。

露天風呂に出ると、相内、と声をかけられる。

「野村?」
「こっち」

手をあげる人に近づく。

「あー気持ちいい」
「な。温泉久々。ここ、いいね。次は女の子と来よう」

野村は空を見上げた。

「なーなー、男と付き合って楽しいの?」
「……さあ」
「ちょっと。真面目に聞いてんだけど」

はぐらかそうと思ったけれど逃げられそうにない。

「男ってより…並木は、まあ…いいなと、思う」

おじさん2人組が上がって行き、俺たちだけになる。

「いつから、好きとかだったの」
「そんな、いや、結構最近」
「……ふーん。なんか、相内ってもっとムッツリで涼しい顔して女の子大好きで超エロいんだと思ってた」
「どんなイメージだ」

野村が手で湯をすくう。

「女の子、好きだったんだよな?」

俺も真似をして湯を掴む。

「まあ。人並みには」

零れた水滴が音を立てた。

「なんで男、しかも今さら並木なんだって思うけど。でも俺だって、なんで今の女の子と居るかって聞かれたら、なんでかわかんない。たまたまいろんなことが合って今一緒にいて、お前らも、きっとそれと同じだよな」

野村は多分、自分に言い聞かせている。
突然変なことになった友人2人の世界観がわからず、戸惑って怒って、それでも俺たちを、なんとか受け入れようとしてくれている。

「ずっと思ってたけど、野村が女の子にモテるの、よくわかる」

優しくて気が利くのはもちろんだけど。
野村には芯がある。一本、まっすぐな芯が。

「急に何。褒めても並木のノロケは許さねえけど」

言ってから、野村は鼻まで風呂に浸かった。

「並木には指導しておくから」
「あいつノロケの意味がわかってないからな」
「うん」
「一生理解できなそう」
「その時は、諦めて」

野村は笑った。





 *





「ちょっとー相内どこ」

くそぅ。見失った。
あの子、なんで下半身隠すんだろう。
意味わかんね。いっつも見たり触ったり舐めたりしてんのに。
照れてんのか?

「並木」
「あ?柿崎いる?」
「こっち」

湯煙の中から柿崎の声が呼ぶ。
内風呂がとにかくたくさんあって、テンションが上がる。

「広いな、ここ」
「いやまじでね。最高じゃない?」
「いい宿みつけたね。ネット?」
「うん。あとお母がよかったって言ってた」
「そうなんだ。でさ、ちょっと聞きたいんだけど。あいつらいない時に」
「なになに」

柿崎はニヤニヤ笑いながら顔を近づけてきた。

「挿れんの?相内に」


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