小説2

□ゆる、ゆる
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女の子の中は気持ちがいい。
だからセックスが好きだ。

「はぁ、すっげ…いいよ」

女の子の体はやわらかい。
ふにふにしてて、いいにおいがする。
切なそうな顔で、葉(よう)くんって呼ばれる。

「っ、気持ちいい?」

あれ。
今日のこの子の名前はなんだっけ。
ちっちゃくて髪がふわふわパーマで、さっきから、か細くイヤらしい声を出してるこの子の名前は。

考えながら腰を動かしていたら、星司(せいじ)くん、と呼ぶ声が隣から聞こえた。

「ゆいなちゃん、えっろ、その格好」

呼ばれて応えた星司はちょうど、そのゆいなちゃんに後ろからつっこむところだった。
星司、ニヤって笑ってる。悪どい笑顔だ。

星司は普段、こんな風に笑わない。
もっと優しい。

「っは…」

挿れた瞬間、星司が息を吐いて、俺はそれを聞いたらいつも。

「あぁ……イく」

どうしてなんだろう。
星司の顔見ると、興奮する。












「葉、あれは?」
「うーん、と……」
「だめか」
「いや。いいよ」
「まじ?行く?」
「うん」

海で、ナンパをする。
真っ青な空と海と、カラフルな砂浜。

タオルを敷いて寝転がる星司は、目だけ動かして女の子を探している。

声をかけるのはいつも星司。
俺は見た目が冷たそう、らしい。髪も茶色いし怖い感じ、と星司に言われた。
だから、黒髪の星司が声をかける。にこやかに。

星司は優しい顔をしてるから、女の子はすぐ油断する。
それで、うしろに控えてる俺にも興味がわくらしい。

話すとぼんやりしたバカだとバレる俺は、見た目とのギャップが武器だって。
だからナンパが高確率で成功しちゃうのは葉のお陰だって。

星司はそう言って俺をほめてくれる。





車は海沿いを走る。夕方だけど、まだまだ暑い。空がほんのりオレンジに染まっている。

今日の俺担当の女の子は、あきちゃん。

あきちゃんあきちゃんあきちゃん。
と、忘れないように何度も心の中で唱える。

「呼んだ?」

あきちゃんがこっちを見る。
あれ。
口から出てたみたいだ。

「呼んだ。かわいいね、あきちゃん」

かわいい。
あきちゃんはふんわり系だ。
俺は多分ふんわり系が好きだ。
多分だけど。

後部座席で抱き寄せて首にキスをしたら、あきちゃんはうふふと笑った。

「ホテルに着くまで待てないの、葉」

運転してる星司が笑いながら言う。

「待てる」
「待てんのかよ」

星司はホテルで酒を飲む。
だから行きの運転が星司。帰りが俺。いつも。

「葉くんって天然なの?」

助手席の女の子が言った。
今日の、星司担当。
なんだっけ、名前。

「天然ってか、大ボケって感じ」

そのなんとかさんが言う。

「結構言うね、れなちゃん」

星司が笑う。
ああ。れなちゃんか。

星司担当、れなちゃんは、くっきりお姉さん系。
星司はこういう、すらっと美人系が好き。間違いなく。

俺は自分の好みより、星司の好みにくわしいと思う。

今日はだから、星司も俺も、いい子と巡り合えたんだ。

ああ。すてきな日。
天気がいい。





「あきちゃん、脱ぐとこ見せて」
「えぇぇ。イヤだよ」
「葉くん邪魔」

お風呂に入るあきちゃんを追いかけてバスルームでイチャイチャしてたら、れなちゃんに怒られた。


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