小説3

□ほんろう
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「中村。またサボるのか」

休み時間が終わる寸前、校舎裏の倉庫に行こうと教室を出たところで、正義感のかたまりのようなやつに声をかけられた。
母親みたいに口うるさく纏わりつく、優等生のクラス委員長、矢崎に背を向ける。

「中村、お前さ。出席日数ちゃんと計算してるんだろうな。このままじゃ2年になれないぞ」
「うるせ」
「逃げてばっかりいないで、ちゃんと向き合えよ」
「……あ?」

振り返り、10センチほど下にある矢崎の真っ直ぐな瞳を見下ろし、睨む。それでもこいつの視線が揺らぐことはない。

「うるせえっつってんだろ」
「お前のために言ってるんだ」
「黙れよ」

矢崎に一歩近づいて、この男が絶対に黙る最後の一言を囁いてやる。

「犯すぞ」

言った途端、何事にも動じないように見えるその瞳が揺らぐ。かあっと音が聞こえそうなほどはっきりと赤くなったその顔を見て満足した俺は、矢崎に背を向けて堂々とその場を後にする。





放課後になり、面倒だと思いながらも鞄を取りに教室に戻ると、矢崎が自分の机で日誌を書いていた。

素通りして鞄を持ち、教室を出ようとした時、後ろから手首を掴まれた。

「中村」

振り向くと、手の匂いを嗅がれていてぎょっとする。

「タバコ、吸ったな」
「……だったら何」
「お前、将来後悔するぞ。体に悪いんだから」

本当に、うんざりする。

「矢崎に俺の将来は関係ないだろ」
「同級生だろ、心配くらいする」
「同級生だから?本当にそうか?お前、」

わざとぐいぐいと体を押すと、少し戸惑ったように矢崎が後ずさる。

「俺とお話がしたいんだよな」
「なっ、なんだよそれ」
「だからくだらねえこと言ってわざわざ俺に近づくんだろ。何。会いたかった?」
「は?ちょっと、誰が」

あからさまに動揺する矢崎がおかしくて、俺は鼻から息を吐いて笑う。
黙った矢崎に続きを言わせないよう、髪を軽く掴んで口づけた。

「んんっ……」

ほら、もう。

「好きなんだろ、こういうのが」
「ちがっ」
「無理矢理されんのが」
「ちょ、っと、やめ、んっ」

後頭部を片手で固定して舌を吸ったり軽く噛んだりしてキスをすると、矢崎はすぐに抵抗をやめる。恥ずかしそうにするくせにだんだん積極的になる矢崎に、俺も我慢が出来なくなって、貪り合いながら机に押し倒す。

「やっ、中村、だめ、だめだ、ここ、」
「…いいだろ」
「よくな、いっ、あっ」

シャツの上から乳首を触ると、すぐに陥落する矢崎。

「……悪い委員長」

至近距離で片目を細めて笑ってやると、とろけた瞳が俺を見上げる。
もっと、もっと責めろと、その目が訴える。

「中村……」
「何」

ベルトを外しズボンを下まで落として後ろを向かせる。

「だめ、こんな、ああっ」
「興奮してんの?まだ何もしてないんだけど」
「誰か、来る、から……」
「黙れよ」
「んっ、あっ……はあ、は、あ」
「ここ、挿れてほしいんだろ」
「違う!んっ」

説得力ねえよ、と言って指を口に入れると、矢崎はねだるようにぺろぺろと、それを舐める。

「なあ矢崎。俺のどこがいいの」
「いいって、何っああっ、はいっ、てる」

つぷ、と指を挿し込んでやる。

「俺の、何が好き」
「はぁ、あぁ、……」
「何が好き」
「あっ!」

まだキツいそこに、自分のペニスを押し付ける。

「あ、ああ、だめ、中村!なかむ、ああっ!」
「矢崎」
「あっ……」

耳元で名前を呼んでやりながら少しずつ押し進める。

「矢崎……俺のどこが好きなんだっけ」

小さな声で喘ぎながら、蕩けた目でこっちを睨む。睨むといっても、もう全然力がない。

「……か、顔」

へえ、と言って、俺はまた鼻で笑ってしまう。

「顔かよ」
「だって……」
「誰か来たかも」
「え、あ、あぁっ!」

一気に奥を突いてそのまま激しく腰をぶつけていく。

「や、中村!なか、むら、あ、あ、あっ、あっ」
「やべえ。矢崎…」

はあはあという矢崎の息が、俺を追い詰めていく。

「矢崎、顔の次は?」
「あ、あ、ああ、あぁ、ん、ん、ん」
「なあ。次は」
「こ、声」
「はは。これ?」
「ああ…!」

耳元で囁くと、中がきゅっと締まる。

「中身とか、興味ねえんだな」
「そんな、こと、ん、ないけど、あぁ」
「だって、何が好きなんだっけ」
「顔…が…好き……」

矢崎のこの言い方が、俺は気に入っている。
テンションが少し、上がる。


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