小説3

□27 チワゲンカ 彰人vs広樹
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創樹くんと教室に入ったら、まず彰人くんが目に入って、隣にいるはずの広樹くんを探すと、なんと。

「どうしたの、お前ら」

創樹くんがニヤニヤしながら最後列に座る彰人くんに近づく。
広樹くんは、彰人くんの対角線上の前の方の席に1人で座っていた。

彰人くんは机にだらりともたれている。珍しい。僕と創樹くんは彰人くんを挟むようにして席を取った。

「何かあったの?」
「……喧嘩した」

彰人くんが言った時の、その向こうの創樹くんの顔。こんなに楽しそうな、無邪気でかわいらしい笑顔は滅多に見られない。
ほっぺがふくっとしてバラ色になり、まるいおめめがきゅっと細くなる。
僕といてもこんなふうにはあまり笑わない。
複雑…!

「なになに、何があった、言えよ」
「喧嘩つか、怒らせた」

はあ、とため息を吐く彰人くんは、本当に参っている模様。ぴりりとしたイケメンフェイスに疲れが滲んでいる。

「浮気でもしたのか、最低だなお前は」
「創樹くん、嬉しそうに言う言葉じゃないよ」
「あいつは浮気だと思ってるかも」
「なに、俺をめちゃくちゃにする夢でも見た?」
「女と買い物行っただけ」

彰人くんが言った途端、教室にバシッという音が響いた。音のした方を見ると、広樹くんがバッグを思い切り机に叩きつけたところで、中から教科書を出している。
広樹くんの周りから、人がさささーっといなくなった。

「おお、怖えな。つか今の話聞こえてたとかどんだけだよ、化け物かあいつ」

創樹くんが楽しげに言った。

「女の子と買い物?」
「高校んときの友達で。そいつ彼氏もいるし、そもそも彼氏の誕プレ探すのに付き合っただけなんだけど」
「2人で?」

彰人くんはうんざりしたような顔で頷く。

「急だったし、それを前もってあいつに言わなかったから」
「ああ…それは……」

広樹くんなら許さないだろう。

「もう知らないって言われてそれっきり電話も出ねえしメールも無視される。さっき話しかけたけどスルーされた」
「あらら、それはもう、ご愁傷さまですね」

かなり憔悴している様子の彰人くんの横で、創樹くんは始終たのしそうだ。

「とりあえず僕、広樹くんの横に座るね」

僕は荷物を持って広樹くんの隣に移動した。

「隣、いい?」

話しかけると広樹くんがこっちを見上げた。
う、上目遣い…

「なっつぅ……」

ああ、これは。相当泣いたんだろう。目が腫れている。

「なっつ、なっつ」
「大丈夫だよ広樹くん」

うるうるした目で見つめられながらすがるように呼ばれて、思わずなにかを請け負う僕。

「喧嘩しちゃったの?」

座りながら聞くと、広樹くんは、ぷいっと口を尖らせた。

「喧嘩じゃないもん。あっくんが悪いんだもん。だって……」

あ、大変、泣いちゃう!
涙声になる広樹くんの頭を思わず撫でる。

「あとでゆっくり聞くからね、泣かないで」

広樹くんは、こくっと頷いて目をこすった。











「あらー、やいちゃうねー、彰人」

なつめが広樹の頭を撫でるのが見えたから言うと、彰人はそれを見てため息をついた。
駄目だ。楽しすぎて笑顔が全然引っ込まん。

「なんでバレた?」
「昨日の夜、1日何してたか聞かれて普通に話した」
「バッカじゃね。言うなよ」
「……やましいことねえなら言うだろうが」

だめだこいつ。

「あっくんはまだまだだねー大っ嫌い」

広樹の話し方の真似をして声高めで言ったら、彰人が一瞬ぎょっとした。
俺ら、声同じだから。

こいつらの喧嘩とか、楽しみ尽くしてやる…!キャハッ!











「あれー、なっつくんだ」
「正浩くん久しぶり」
「正浩ー!」

たたたっと駆け寄った広樹くんが、正浩くんに抱きつく。

「なになに、広樹ひでー顔。ウケんだけど。つか2人?珍しくね?」


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