小説3

□ほんろう 3
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「お前も声出してみる?」
「は?何言ってんの、と、とりあえず俺、トイレ」
「対抗してみれば?かわいい声で中村って呼べよ」

滑らかな首筋に噛みつくと、はあぁ、と気の抜けたような声を出した。

隣からは女の声。

「お前の方がかわいい声出るだろ」
「何っ、は?ちょ、やめっ、中村!」

学ランを剥ぎ取って白い胸を吸う。

「あぁんっ!」

あまりに反応が良くて思わず顔を上げて矢崎を見る。もう上気したような、蕩けた顔。

「…もしかして、女の声聞いて興奮した?」
「っ、そんなわけ、ないだろっ」

何の前触れもなく矢崎の股間に手をやる。

「いやっ、何してっ」
「勃ってんじゃん」
「ちがうっ」

真っ赤になって否定する矢崎に体重をかけて床に組み敷くと、たいした抵抗もせずに目を伏せた。

「お前好きだろ、こういう、隣に聞こえるかも、みたいなシチュ」
「はっ、違うし…」

手で顔を隠そうとするのを押さえつけてキスをすると、自分から俺の体を引き寄せようとする。
何なの、こいつは。

焦るような手つきで俺の制服を脱がそうとする矢崎を見ながら、俺は思い出す。

「お前、誕生日なんだよな。今日」
「うん…」
「なんか、俺にして欲しいこととか、あんの」
「え?」

矢崎の手が止まった。代わりに矢崎のズボンを脱がせにかかる。

「要望を言ってみればって言ってんの」

矢崎は素直に腰を上げて脚を動かしズボンを脱いで、それから俺の顔をまじまじと見た。

「何でもいいの?」
「どうぞ」
「…優しくして」

真顔で言う矢崎を見て、こっちが恥ずかしくなる。

「何それ。頭おかしいんじゃね」
「何が!何でもいいって言ったろ!」
「絶対勉強のしすぎだろ」
「は?!う…ぅんっ」

黙らせようと思いまたキスをする。
遠慮がちに開かれる口に、遠慮なく舌を入れた。

「矢崎」

呼んで、また舌を突っ込む。矢崎は目をぎゅっと瞑って、鼻息を荒くした。

下着に手を伸ばし、そこに触れると、矢崎が体を震わせる。
ゆっくり扱いてやりながら、至近距離で矢崎の顔を見た。

「あ、ああ…中村…」
「矢崎。俺の何が好き」
「かっ、顔…と、んっ、声と」

と?
何だろうと思ったけれど、矢崎はそれ以上何も言わなかった。

「顔、好きなの」
「ん、好き…かっこいい…ん、ああっ」
「声は?なんで?」
「なんでって…わかんないよ…」
「俺も、お前のエロい声、」

好きだと、言ってしまっていいのか。
迷っていたら、矢崎が俺の手に手を添えた。

「もっと…して、早く」

だから。なんなの。こいつまじで。

まともなのか変態なのかわからないと思いながら、矢崎の体をうつ伏せにして、両手で尻を広げる。

「いやっ!中村、」
「ヒクヒクしてる」
「やめ、バカ!やめろ!」
「恥ずかしいの?」
「や、優しくって、言ったじゃないか!」

焦ったのだろう。声が裏返っている。

「優しくすんのはこれからだろ。な?」

なるべく優しく聞こえるように言ってやってから、そこに唇をくっつけた。

「っや、いゃぁ…」

甲高い声で鳴く委員長。

「ダメ…舐めちゃ…あっ…」

舌を突っ込む。

「ああっ!あ…気持ちいい…あ…あん…」
「えろ」
「なか、むら、顔見たい、から」

矢崎は体を押さえる俺の手を握り、顔だけ振り向いた。仕方ないので仰向けにしてやる。

「顔、見たいの?俺の」

こくりと頷き、脚を開く矢崎。

「何。ほしい?」

また、頷く。開いた脚を両手でさらに広げる矢崎。

「何がほしいか、言ってみろよ」

堪らなくなってキスをして、言葉を待つ。

「やだ…」
「言えねえの?」

普段は真面目なその顔の、とろとろした表情に思わず見とれていると、矢崎は一瞬泣きそうな顔をした。

「…優しくするって…言ったじゃん…」

多少驚く。俺なりに優しい言い方をしたつもりだったのに。

「…今俺優しくねえ?」
「全然っ、優しくない…」
「は?どこが」
「だって…もっと、中村、優しいこととか、言ってよ」

意味がわからん。
優しいことって何だ。

頭をフル回転させていると、矢崎が目を逸らして下唇を噛んだ。

「俺、今日、誕生日なのに…」
「わかってるけど」
「…っ、もっとさ、なんか、あるじゃないか…」

何が。


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