小説4
□安達さん、ショボーン。
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安達さんは3回もおかわりをしてくれて、僕は嬉しくって顔が熱くなってしまいました。
それでも、安達さんはまだ塞ぎ込んでいるように見え、心配は増すばかりです。
「安達さん。今日は一体どうしたのですか」
「みっちゃん…聞いてくれるかい…私は本気で悩んでいるんだ…」
安達さんはそう言って、僕の首筋に顔を埋めました。
「当たり前ですよ安達さん。僕にできることだったら何でもしますっ」
僕はなんだか正義感に溢れてしまい、安達さんの背中を一生懸命撫でました。
反応がないので心配しかけると、スーハースーハーと音が聞こえます。
「みっちゃんの匂い…」
「嗅がないでください」
「はぁ…」
聞えよがしにため息をつかれますが、解せません。
「実はね」
「はい」
「私は…っ」
言葉を切った安達さんが心配になり顔を覗き込むと、本当に悔しそうに下唇を噛んでいました。
「公衆便所の臭いに反応してしまったんだ…!」
「……いろいろと詳しく聞きたいです」
「そうだよ今から話すとも…」
安達さんの声は今にも泣き出しそうでしたが、僕はその続きに少し嫌な予感がするのです。
「僕はみっちゃんを抱く時、ああ、セックスをする時という意味でだが」
「わかりますから大丈夫です…」
「君に風呂に入らないよう頼んでいるでしょう?」
「僕は嫌なのに…」
「私はそうでなければいけないと思うんだよ。石けんの香りに君の何が写る?私はみっちゃんを愛しているのだから、みっちゃんそのものの香りが嗅ぎたいんだ。素材の味が生きている方がおいしいのは料理もみっちゃんも同じだ。だからペニスも」
「安達さん、そのお話、長くなりますか?」
「ひどいね!自分から聞くと言っておいて!」
「だってなんだか雲行きが」
「とにかくまああれだ、ペニスの匂いだって密かだったりあからさまだったりはすれど絶対に嗅ぐようにしているからそりゃ天使のようなみっちゃんだってどうしてもお手洗いには行く訳だしかわいいかわいいペニスからだっておしっこが出るわけだからその香りがしてしかるべきだということまではわかるかい?」
「口を挟めないように一気に言いましたね…」
僕の脳が処理しないうちに、安達さんは話を続けます。
「最近はもうみっちゃんのペニスを経由して君のおしっこの匂いを嗅いだだけで私は即戦力の臨戦態勢に持ち込めるようになったわけだがそれが災いして公衆便所のどこの誰のものだかわからんあの悪臭を嗅いでまさかそんなことがと思うだろうが私は私は…!」
「落ち着いてください安達さん」
「私は…そう…きっと脳が勘違いして…ああ…無念……!だがみっちゃんを抱いている時の勃起とは雲泥の差だったことだけは信じてほしい!みっちゃんの時の勃起を『取引先に対する社畜の平謝りくらいの動き』と例えるならば、……ああ…そんなことはどうでもいいね…」
うつくしい安達さんは、本当に悔しそうな、悲しそうな目で僕を見ました。
「みっちゃん……愚鈍な私をどうか許して……」
「安達さん…」
それは、僕にはとても微笑ましいお話に思えたのです。
「安達さん。世の中には、好きな人ではない女性のおしりを見て楽しむ方や、好きな人ではない女性のお胸を見て喜ぶ方が、たくさんいますよ」
「うん?うん。そうだね。理解しがたいことだ」
「それなのに安達さんは、僕のことだけを思って…僕は感動してしまいました。安達さんは随分その…あの、…僕のことを、気に入って下さっていて…フフフフ」
僕は嬉しくて途中で笑ってしまいました。
安達さんはそれを見て、段々表情を柔らかくしました。
「ああみっちゃん。君はやはり間違えて地上に下りてしまった天使そのもの」
ぎゅっと抱き締められて、僕はもう、どうしようもなく幸せな気持ちになったのでした。
「では、本家を嗅がせていただこうか…パンツを脱いでご覧」
「よかった…安達さん、いつも通りですね」
-end-
2014.12.4