小説4

□おでん
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シューシューという音が、尋常でない音量で聞こえて来る。

「…なあ。何してんの」

パソコンをいじる手を止めてすうに尋ねた。

「煮てる」

返ってくるのは簡単な答えだ。

「シュンシュンいってんぞ」
「そうだよ。さとくん本当に圧力鍋知らないの?」

そこで初めて、すうがいとおしい顔をこちらに向けた。

日曜の夕方、2人して出かけた買い物からの帰り、すうが家に寄ってでかい箱を持ち出したのは知っているが、その中身の説明を受けてもいまいちよくわからなかった。

「便利だなぁ」
「そうだよ。時短だよ、時短」

料理のことになると自分が優位に立てるからか、すうは得意げに言った。

「圧力ねえ」
「全然違うんだから」
「何を煮てんの」
「牛すじと大根」
「何味の?」
「何味っていうか…おでんだよ」
「おでんも作れるのか」
「おでんは煮るだけだから簡単」
「へえ」

料理のことは本当にわからない。
逆に、簡単に出来そうなものに案外時間がかかっていたりして、発言にも注意が必要だ。

「あー、日本酒でも買ってくればよかったなぁ」

すうはオヤジみたいなことを言いながら、まな板で何かを切っている。

随分大きくなった。
それでも少し華奢な背中を見つめながら、今手を出したら怒られるかどうかを考える。

今手が離せない、という言葉が、文字通り手を離すと危険な状況なのか、手は離せるけど一応拒否してみているだけなのか、俺にはいつも判断がつかないのだ。

「すう」
「はい?」
「今、ヒマ?」
「ヒマなわけないだろ、何言ってんの?」

これだ。難しい。多分今は本当にダメな感じだ。
それでも、もしかしたらその鍋の火を止めれば大丈夫なのだろうか、と考えて、立ち上がってガス台の前に立つ。

「火、止めていい?」
「ダメだよ!」

怒られた。

「今いいところなんだから」

すうは、野球中継を譲らない父親のようなことを言った。
そして俺は叱られた子どものようにしゅんとしてパソコンの前へ戻る。
明日までにやっておきたい仕事があったのだ。
集中、集中。




「さとくん」

呼ばれて顔を上げると、すうが隣に座って肩を寄せてきた。

「煮終わったの?」
「うん。他の具も入れて、冷まして味をしみこませてるとこ」
「ふぅん。早く食いたいな」
「お腹減った?仕事、もう終わる?」

すうが擦り寄って来た。かわいいな、と思った瞬間、耳元で小さな声が甘えるように言う。

「ねえさとくん…えっちしたい」

お、おう、と返事をするうちに、すうが膝の上に乗る。そして耳にキスをしてきた。

「いい…?」

少し恥ずかしそうに聞くすうに、ダメなわけないだろと笑うのが精一杯だった。
突然そんな風に誘われるなんて思っていなかったので心の準備が、と内心あたふたしている俺の唇を、すうがぺろりと舐める。

「さとくん」
「…ん」
「なんかね…すっごくね…したい」

このかわいい生き物をどうしたらいいだろう。
とりあえず上の服を引っ張り上げて脱がせ、乳首に吸い付く。

「あっ、は、んあ…」
「すげえ、どしたの」
「わかんない…すごい、感じる…」
「やべえよ」

首を逸らして息を荒げるすうに、即座に勃起して股間が痛くなった。

「なあ、早く挿れたい」
「うん…俺も…」
「下も脱いで」
「…さとくんも…さとくんも全部脱いで」

生唾を飲み込みながら急いで服を脱ぐと、すうは潔くすぽすぽと全裸になって俺に跨ってきた。

「勃ってんじゃん」
「そうだよ…だってしたいんだもん」
「俺も」
「さとくんあったかい」

抱きついてくるすうに荒々しくキスをする。

「んん…っ」
「はぁ…すぅ…ローション取って…」
「うん…」
「早くしろ」
「待ってよっ、あっ、ちょっと」
「早くしないと舐めるぞ」
「だめ、出ちゃいそう…」

ローションを取ろうと腕を伸ばしたすうのペニスを握ると、すうは体を捩らせて逃げようとした。

「お前…どうしたの」
「わかんないってば…」

眉根を寄せて熱い息を吐くすうは、目を潤ませて俺を見た。

「ああ…ん」

喘ぎながら勝手に俺のペニスに股間を擦り付けてくる。

「…お前、発情期なんじゃねえの」

半分ふざけて、半分そうだったらいいのにと思いながら言うと、すうが腰を動かしながら視線を外した。

「…そうかも…すっごい…気持ちいいし…さとくんのこと好き」

唇にむしゃぶりつきながら、すうから奪い取ったローションボトルの中身を手に出した。
多少こぼれて体に垂れ、落ちていく。

「ああっ…さとくんの、指…入っ、ちゃう…」
「入れてんだよ…は、なぁ、中すげえ、うねうねしてる」
「早く、ね、ああっ、あ、あんっ」
「ああ、すげえ…早く挿れたい…すう…好きだよ…」
「ああ、あ、あ、ああ…は…」

まだ指を入れただけなのに、すうは腰を前後に動かして喘いだ。



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